私の一文字

2025年11月号

会員の方が思いを込めて選んだ一字に、書家の岡西佑奈さんが命を吹き込む「私の一文字」。
今月は、吉田 憲一郎企業変革委員会委員長にご登場いただきました。

感動を「創」る

企業変革委員会 委員長 吉田 憲一郎
ソニーグループ 代表執行役会長

岡西

今回、「創」を選ばれた背景をお聞かせください。

吉田

ソニーは来年で80周年を迎えます。ここまでに積み重ねてきた物語の現在地が「創」そのものだと思い、この一文字を選びました。もともと当社は「人々の生活を良くしたい」という志によって戦後復興期に立ち上がった会社です。次には、質の部分にこだわり、時代の先駆けとなるような製品を生み出してきました。ただし時代とともに産業は変化し、今や音楽も映像もインターネットで視聴する時代です。20世紀のソニーはウォークマンやCDといった「プロダクト」を通じ感動を届けることに貢献してきましたが、21世紀のソニーは感動を創る側に貢献しようという方針で、進んできています。

岡西

「創」という漢字の部首は、刀で切ることを由来とする「りっとう」です。刀で傷つける意味から転じて、「刀で切り開き、新たなものを生み出す」といった前向きな意味合いを持つようになりました。先ほどのお話に重なる漢字だと感じます。

吉田

「世界を感動で満たす」ことをPurpose(存在意義)としているのですが、それを実現するのは創造の力に他ならないと思っています。

岡西

環境が変化する中で、求める人材像は変わってきているのでしょうか。

吉田

本質的には変わらないと思います。当社の設立趣意書に「愉快なる理想工場」という言葉がありますが、「愉快なる」というのはエンターテインメントに通じます。また当社で昔、「『出るクイ』を求む」という求人広告がありましたが、チャレンジ精神への期待も変わりません。ただし技術は時代とともに変化します。かつてはユーザーが使う技術を求めましたが、昨今は新たな価値創造にかかわるクリエーター技術を重視するようになりました。

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岡西

ご自身の感性を磨くために意識されていることはありますか。

吉田

できるだけライブ感のある場に触れることを意識しています。ただ、現地に足を運ぶのが難しいことも多いため、少なくとも映像作品を通じて雰囲気を味わうようにしています。

岡西

経済同友会では企業変革委員長を務めていらっしゃいますが、今後の委員会の展望をお聞かせください。

吉田

パーパスは、自社がどのように社会に貢献するか、その存在意義を掲げたものです。一方で、企業が持続的に発展していくためには、それをプロフィットと結び付けることが重要です。経営者の役割はその二つをきちんとつなげることだと考え、委員会の中でこの視点をよく投げかけてきました。経済同友会は経営者同士の学び合いの場だと思っており、今後も会の発展に貢献していけたらと考えています。
書家 岡西 佑奈
1985年3月生まれ。23歳で書家として活動を始め、国内外受賞歴多数。
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