私の一文字
2025年2月号
会員の方が思いを込めて選んだ一字に、書家の岡西佑奈さんが命を吹き込む「私の一文字」。
今月は、大西健丞副代表幹事にご登場いただきました。
今月は、大西健丞副代表幹事にご登場いただきました。
「丞(たす)」ける仕組みを作る
共助資本主義の実現委員会 委員長 大西 健丞
ピースウィンズ・ジャパン 代表理事
ピースウィンズ・ジャパン 代表理事
岡西
「丞」は人を助ける、万物を助けるという意味を持つ漢字です。両手を広げて助けるイメージで書かせていただきました。この文字への思いを伺えますか。
大西
人道支援の仕事にも通じる漢字として選びました。名前にも入っている文字で、父から意味を聞き、漢和辞典を引いた記憶もあります。体現できているかは分かりませんが、私自身の活動の本筋を表す文字だと思っています。
岡西
多岐にわたる取り組みをされていますが、活動を決めていく観点などはおありですか。
大西
基本的には巡り合った話に対して自分たちが最適者であればやると決めています。「他にやる人がいない」「今、目の前に助けるべき状況がある」ことも最適の一つです。目の前の一人を助けられないのに、多くの人を助けることなどできません。理屈だけではなく感情やパッションも含めて決める方が正しいこともあると思っています。
岡西
大西さんの原動力はどこから来ているのでしょう。
大西
自己犠牲や奉仕という感覚をある程度理解する必要があると思っています。私自身は父の影響が大きく、大学で出会ったカトリック神父である教授からも影響を受けました。使命を果たす覚悟のようなものです。ヤングケアラーのように強烈な経験をした人は、その感覚が強いかもしれません。そうした人がソーシャル分野で活躍できるような道筋づくりにも取り組んでいます。
岡西
仕組み作りに長け、人とのつながりも広いようにみえるのですが、昔からそうだったのでしょうか。
大西
仕組み作りをするのは、そうしないと日本ではソーシャル分野にお金が流れないからですね。本気で公益活動に取り組む人たちにリソースを回していく仕組みが必要です。そのために、意思決定者の中でも先駆的に動く人たちと普段から話すようにしています。
岡西
今後何を成し遂げていきたいとお考えですか。
大西
いくつかありますが、災害に対する民間の防御能力向上は、今後さらに力を入れるべきだと思っています。実は能登半島地震の際、奥能登に一番早く降り立ったのは私たちのヘリコプターです。もちろん災害対策における行政の役割は大きいのですが、最大の問題は競争相手がいないことです。私たちは社会維持機能を民間でしっかりと持つべきだと考えて活動していますが、同時にそれが行政の改善につながればよいと思っています。
岡西
経済同友会では副代表幹事でいらっしゃいますが、今後の展望をお聞かせください。
大西
「企業がソーシャルなことにコミットする」ことを広げていきたいと考えています。ただし、無理のない広げ方が大事です。例えば欧米で進むソーシャルレンディング*という仕組みもあります。さまざまな仕組みを活用しながら、一歩ずつ進めていきたいと考えています。
* 非営利団体や社会的活動に対する支援を概念の起源とした、金融機関を介さずに個人や企業から直接融資を行える金融サービス
書家 岡西 佑奈
1985年3月生まれ。23歳で書家として活動を始め、国内外受賞歴多数。