私の一文字

2024年7月号

会員の方が思いを込めて選んだ一字に、書家の岡西佑奈さんが命を吹き込む「私の一文字」。
今月は、菊地唯夫副代表幹事にご登場いただきました。

心を「継なぐ」

副代表幹事 サービス産業活性化委員会 委員長 菊地 唯夫
ロイヤルホールディングス 取締役会長

岡西

 「継」という文字は、切れた撚より糸をまたつなぎ合わせる意味を持ちます。心が途切れることがないようなイメージを重ねて、力強く書かせていただきました。

菊地

何度か会社の危機に直面した経験から思い浮かびました。最初のキャリアでは銀行員として経営破綻の渦中にいましたし、今の会社では内紛による混乱も経験しました。コロナ禍も大きな危機をもたらし、どう会社を継いでいけるかを考え続けていました。

岡西

継続という点では、社長ご就任後にはどのようなことを意識されてきたのでしょうか。

菊地

当時は社内が混乱し、社員の心が切れていたことが一番の問題でした。それでは当社が大切にするホスピタリティは発揮できません。再び心を「継なぐ」必要があります。そこで、従業員向けの決算説明会を全国で行ったり、私自身が各店舗に足を運んだりすることから始めました。

岡西

かなりの数の店舗に行かれていることに驚きました。

菊地

社長の頃は年に250店舗くらい行ったと思います。事前連絡はせず、現場の生の状態を見に行きました。今も年に数回、食器洗いなどの現場の仕事に入っています。当社で価値を生み出しているのは現場の人たちです。そのDNAがコロナ禍からの回復も支えてくれました。現場力を発揮できる環境づくりが経営者の役割と、常に意識しています。「現場で解決をしろ」という経営者の話も耳にしますが、構造的変化の中で解決を現場に委ねるのは無理な話です。

岡西

環境変化に対応するために、どのようなことを心掛けてこられたのでしょうか。

菊地

経営者がしっかり意識をしていないと、従業員が「マス」として見えてしまう可能性もありますので、できるだけ一人ひとりを意識することを心掛けてきました。「1対1」をできるだけたくさんつくることが企業の力になると思っています。とはいえ、個々に対応する限界もありますので、社内の「経営塾」を始めました。900人ほど受講したと思います。
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岡西

留学経験をお持ちですが、どう活かされていますか。

菊地

学んだ内容もさることながら、異文化へ違和感を覚えた経験が大いに活きています。違和感を持つことがなければ声も上がりません。「業界では当たり前」のような考え方では改善も進みません。そうではなく、今の時代に対して本当にフェアか、使う指標は妥当なのか等々、違和感があるところに仮説を立てて検証することを繰り返してきました。

岡西

違和感への視点には非常に共感します。最後に、経済同友会の副代表幹事として、展望をお願いいたします。

菊地

サービス産業は、人手不足などの課題に最初に直面する産業です。サービス産業を一つのモデルとして、委員会活動などを通じて日本経済の活性化に向けて貢献していきたいと思います。

書家 岡西 佑奈

1985年3月生まれ。23歳で書家として活動を始め、国内外受賞歴多数。
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