2025年5月号
国税庁で酒を学ぶ


シグマクシス・ホールディングス 独立社外取締役(監査等委員)
酒税の徴収が国税庁の担当だということは皆さんご存知だと思うが、酒類の製造・販売の免許、さらには酒類に関する技術指導まで国税庁が管轄していることはあまり知られていない。私はかつて35年間大蔵省・財務省に勤め、その間2度国税庁に勤務した。1回目は、島根県の浜田税務署長。2回目はその29年後に国税庁長官を務めた。いずれのポストでも酒について大いに学んだ。
長官時も全国12国税局を視察して回る合間にビール工場、ウィスキー蒸留所、ワイナリー、そして日本酒や焼酎の酒蔵を見学した。
私は、ビール、ウィスキー、ワイン、焼酎と何でも嗜む口だが、やはり日本酒を飲むことが一番多い。まず吟醸酒、次いで少々酸が効いた純米酒、最後に燗酒を飲むのが気に入りの飲み方だ。吟醸香がどうの、キレがどうのと勿体ぶってつぶやくのであるが、実は大した味覚・嗅覚を持ち合わせていないことを白状しておこう。どの酒であれ結局いつも「うまいなあ」と杯を干すのである。
*1 酒等を担当する技術系公務員。明治期、酒税は国の特に重要な財源であり、酒の安定製造を技術面から支援するために鑑定官が設けられた
*2 酒造界で最も権威あるコンテストである全国新酒鑑評会。現在、同鑑評会には全国どこの蔵も出品できるが、かつては国税局単位、税務署単位でその予選的な鑑評会が行われていた
