代表幹事の発言

山口明夫経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

公益社団法人 経済同友会
代表幹事 山口 明夫

冒頭、4月6日に公表した経済同友会 2026年度事業計画および中東情勢に言及した後、記者の質問に答える形で、事業計画(「共助成長社会」へ込めた思い、各委員会設置や委員長人事)、日本としてのAI推進、エネルギー需給問題、社会保障国民会議等について発言があった。

山  口:事業計画について昨日発表したため、(改めて)皆様にご説明したい。本年1月に(代表幹事に)就任し(て以降)、現在の経済同友会や日本を取り巻く環境を自分なりに整理して、色々な有識者の方々にお話も聞き(ながら)、そもそも経済同友会は何のために存在するのかという基本に立ち返って整理をしたものである。昭和21年4月30日に、経済同友会が設立した時の設立趣意書の中に、「われわれは経済人として新生日本の構築に全力を捧げたい。而して、日本再建に経済の占める役割は極めて重要である。蓋し経済は日本再建の礎石であるからである。われわれは日本経済の再建を展望しつつ惨たる荒廃の現状を顧みて責務の重大なるを痛感する。」という一文がある。経済成長を介して日本の成長にしっかりと貢献するという基本に立ち返り、そのために何を行うべきかをしっかりと考え、その結果としてどのような委員会を設置すべきか、そこから何をアウトプットとして出すべきかを考えた。アウトプットにこだわると、最初の(新代表幹事内定者ぶら下がり)会見でもお話したが、そこに繋がってくる。経済同友会と他の団体との違いは、「個」の結合体であるところだ。(事業計画において)『経済同友会とは、同じ志を持ちながら「異彩」を放つ「個」の結合体である。独創的な経営者、グローバル企業のリーダー、変革に臨む起業家、アカデミア、NPO。立場は異なれど、各界で卓越した力を発揮する人材が一堂に会し、社会変革に向けた議論を尽くし、先見性ある提言を行い、自ら行動する。この「異彩の結合」にこそ、経済同友会の真価がある。』と整理している。NPOの方やアカデミア、スタートアップの企業、従来から企業の規模(や組織のカテゴリー)に関係なく様々な方が経済同友会の会員になっていただいている。その方々と、先ほどの設立趣意書に基づいて、経済活動を通じて日本を良くしていくことに皆で貢献していく。自らも活動する。(本会は)このような集まりであることをご理解いただきたい。現状認識としては、AIやロボティクスをはじめとするテクノロジーは急激な進化を遂げている一方、米中対立の深刻化やウクライナ・中東の紛争に見られるような、国際秩序の不安定化と分断が進んでいることも事実である。このような分断の時代だからこそ、対話と協調に基づく秩序の再構築に貢献する意思が重要である。国内に目を向けると、少子高齢化や人口減少、社会保障の充実等のチャレンジすべき課題が多くある。このような認識のもと、国家の自律性の確保、持続的な経済繁栄の実現、そして法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序への貢献に力を注いでいきたい。そのための成長ストーリーとして、まずは、企業自身がより競争力のある企業に成長する(ことが重要である)。すなわち、利益をしっかりと稼いでいく。それを投資や事業再編、賃金上昇に回し、好循環に繋げ、その活動の結果として、国内経済が活性化し、税収の拡大や財政の健全化にも寄与することで、最終的には社会インフラ、デジタル化や社会保障制度等を含めて、プラットフォームが安定していく。このサイクルをしっかりと回していきたい。ありたい社会についてはどういうキーワードがいいのかと考えたところ、「共助成長社会」とした。お互いをしっかりと助け合うということは、人として、また社会で活動する企業として当然であるが、一方で、成長にもう少しこだわる必要があると考えて定義したものである。その1つの重要な要素として、「最先端テクノロジーを、生きる力に変えていく」と掲げた。(また、)定量的な目標値も定義した。(具体的には、)名目GDP成長率・年3%、実質GDP成長率・1%以上(を長期継続し)、2024年度対比で2040年には1人当たりの名目GDPが倍増している日本を目指す。この目標(の実現)に対して、私達が経済活動を通じてどのような貢献ができるのかを考えていく。また、一人当たり名目GDP倍増により実現することを、家計、企業、国家・社会に分けて定義した。その上で、「共助成長社会」の実現に向けて「七本の懸け橋」という形で活動を進めていく(こととした)。まず短期策として2026年度から2027年度は「経済の熱量を取り戻す」と位置づけ、その次(中期施策:2026年度~2030年度末)は「供給力の抜本的強化」、長期施策(2026年度~2035年度)は『「高付加価値国家」の完成』とした。これらはそれぞれ1つ1つに取り組むわけではなく、全て並行させる。(また、「社会の要素」として)「国民すべてが、安心と安全を実感出来る社会」と「持続的な経済成長を通じて、活力を感じられる社会」の2つ(の施策の軸)に分けた。前者については、「①生活防衛とセーフティネット構築」という項目で、「即効性のある生活苦対策」「税制度の見直しと革新」等の今まさに国民会議等で議論されている内容の実現に向けて、私達も提言や様々な活動を実施していく。「②安心・安全の基盤確立」としては、「医療・介護の再建(担い手)」「サステナブルな経済社会確立」「防災・国土強靱化」等を記載している。「③豊かさと幸福の実感」では、「社会包摂(DEI)と共助の拡大」「教育の革新」等『「高付加価値国家」の完成』に向けて(の項目を)掲げている。後者については、成長にこだわっており、一番(の短期施策)に「④企業の代謝・活性化」(を挙げた)。30年間ずっとデフレの中で経営してきた中で、全てがそうだとは申し上げないが、より積極的な投資また事業構造変革の重要な時に来ていると考えている。(よって、項目内では)「企業の生産性含む構造改革」「地方・中堅中小企業活性化」「スタートアップの成長加速」等を挙げている。それから「⑤産業構造の進化と産業創出」では、規制改革・業界構造を変えていかなければならないと考えている。「⑥世界市場での事業拡大」にも取り組んでいきたい。「⑦経済同友会のさらなる発展」としては、会員が(現在)約1,800名と、2,000名近くになってきているため、事務局員も含めて学習、交流、体験を通じて、会員が自己研鑽できる魅力的な場にどんどん変えていきたいと考えている。この七本の懸け橋に基づいて、各委員会を設置した。委員長・筆頭委員長も全て決まっており、今週から副委員長やメンバーの募集を(開始)している。会員の皆様から(既に)多数応募いただいており、具体的な活動に入っていきたい。特に、医療・介護改革委員会を独立して設置した。医療・介護の現在の社会課題に対して、どう取り組んでいくかは極めて重要なテーマである。(また、)行政のDX委員会も新たに設置した。地域基盤デザイン委員会では、経済活動を行う上で、地域のインフラ老朽化等の様々な課題についてどう取り組んでいくか検討したい。(さらに、)AI戦略委員会も設置した。AIについては今まで企業のDXを推進する上で、どのようにAIを活用するかといった形の委員会として活動してきたが、昨今のAIの進化とソブリン(データ主権)等をさらに強化していくために、AIのアプリケーションからベースのハードウェアまでどのように作り上げていくのが日本として良いのかについて考えていく。これらの委員会で、4月からさっそく活動をスタートしている。以前にも申し上げた通り、本会ではこれまで十数年(に渡り)多数の提言を行ってきた。それらが現時点のスナップショットでどうなっているのか、目指すものは何なのか、(それに対し)どのようなギャップがあるのか、また改めて整理して共有させていただく。そのギャップを埋めるためのアクションプランとして、各委員会で何を行っているのか、本会として何に取り組んでいくのか、どこの団体と誰と一緒に実現に向けて取り組んで活動していくのか、その辺りも具体的に共有していきたいと考えている。

山  口:中東情勢については、トランプ米大統領は、(日本時間の)明日朝を(交渉)期限にメッセージを出しているが、最悪の事態は回避していただきたい。このような形で人の命が亡くなることは、あり得ないと思う。この緊張を各国協力のもと、一刻も早く改善されることを切に願っている。

Q:事業計画の大きなビジョンとして、「共助成長社会」の実現を掲げられている。前代表幹事が掲げた共助資本主義において、「共助」という言葉が初めて使われたと思うが、「共助」(という言葉)を残した意図などについて伺いたい。

山  口:成長(に向けた)実現だけでは、企業として、人として、社会に対する優しさをお互いに忘れてしまう(可能性があり)、それでは本末転倒である。ベースとして大切にしなければいけないことは、やはり「共助」ではないかと考えており、そのキーワードを残した。しかし、それだけでは「成長」できないため、この2つ(の言葉)を組み合わせた。

Q:AI戦略委員会というのは、初めて設置したのか。

山  口:AIというテーマは、どの委員会にも関わりがある。企業変革であっても、医療の世界であっても(そのテーマは)出てくる。それぞれの委員会において議論をすることになろうかと思うが、(本委員会による)横串しを通して、そもそも日本としてのAI戦略がどうあるべきか、経済界として踏み込んで議論し、提言(する)。そして、自分たちが実現すべきものについてはしっかりと取り組んでまいりたいと考えている。

Q:政府は、国産AIの推進など、反転攻勢に出る方針を掲げているが、日本としてAIをどのように成長の糧としていくべきだと考えているか。

山  口:AI(の世界)は、日本だけ、もしくは米国やグローバルだけという世界ではないことは明らかである。国内でデータを担保して主権をもって運用するものも必要であり、グローバルの汎用的なAIを活用することも有効である。それらは全体の設計の中で、使い方を明確に定義することができる。国内(にあるAI)、海外にあるAI、それらをどのような形で設計していくべきか、この(AI戦略)委員会でしっかりと議論、整理をして、各企業でこのように進めていこう、という形まで持っていきたい。

Q:国内のエネルギー需給について伺いたい。中東産原油の供給不安が強まっており、他国ではガソリン節約などの需要抑制策(の動き)が出ているが、日本政府は依然としてこのような(需要抑制の)対策には慎重な姿勢を続けている。(需要抑制は)経済に冷や水を浴びせる懸念もあるが、山口代表幹事は需要抑制策についてどう考えているのかを伺いたい。

山  口:政府のご尽力により、2027年1月末まで(の必要な原油供給量)を確保されたと伺っており、経済(界)、各企業としては非常にありがたいことである。一方、イラン情勢がどのようになっていくのかということは、日々変わっている状態である。かつ、(供給が確保できた状況においても、今後は)原油高から物価高に繋がり、金利や為替にも影響していくと思われる。やはり、抑制(セーブ)するところは抑制していかなければいけないと思う。(また、)今回に限らず、最悪のケースを含め様々なケースを想定したコンティンジェンシープランなどのリスク管理の対策は、極めて重要なことである。一刻も早く解決をしていただきたい。それに尽きる。

Q:今お話があったコンティンジェンシープランというのは、今の文脈では原油の供給不安(を念頭に置いたもの)と理解しているが、実際に供給が受けられなくなった場合に、最悪を想定して日本としてどのように対応するかという趣旨のお話か。

山  口:日本としてどうすればいいかを検討する必要があり、(実際に)検討が進んでいることと思う。各企業も同様だ。代替品を検討するのか、様々な(使用)量を制限するのか、様々な(コンティンジェンシープランの)形があるだろう。(その内容を、国民に)周知するか否かは別として、こういった状況の発生有無に関わらず、各企業は危機管理のプランを有しているので、それをしっかりと見直して対応していくこと(が重要)だと思う。

Q:今回の事業計画では、組織再編もあったと認識している。3月の(山口代表幹事の)会見で、伊藤穰一氏については、犯罪に関与してないという本人の見解を尊重するが、今後議論の余地は出てくるかもしれないという話だったと記憶している。確認だが、今回は委員会委員長などの指導的な役割から退かれたという理解で良いか。

山  口:(委員長から退いたのは)伊藤氏だけではない。かなりの(数の)委員長が、今回(の事業計画で)交代している。今回の事業計画に適した形で、皆さん(委員長へ)着任いただき、また様々な方々に委員長を経験していただくという意味で、通常の組織改編の中で対応させていただいた(結果である)。伊藤氏には継続的にアドバイザー、もしくは何らかの形で一緒に活動をお願いしたいと(考えている)。AI戦略は極めて重要であるため、TEAM JAPANと言えるぐらいのメンバーを取り揃え、活動したいと考えている。経験や知識(という観点)からすると、重要な1人であることは間違いない。

Q:これからも指導的な役割を期待するということか。

山  口:指導(的な役割)か否かというよりは、重要な仲間として活動いただく形になる。

Q:エプスタイン文書へ伊藤氏の名前が記載されたことが、今回の判断に影響したのか。

山  口:私達もその文書や(千葉工業)大学の調査結果のレポートも全て分析をさせていただいた。結果の判断として、そのようにお願いしている。

Q:本人からは何らかの聞き取りを行ったのか。

山  口:ご本人とも会話をしている。

Q:どんなふうにおっしゃっているのか。

山  口:レポートの中身についてしっかりとご説明をいただいた。

Q:2013年から頻繁にお会いになっていたということだが、エプスタイン氏が未成年者に対する売春関連の罪で有罪判決を受けた5年後にあたる。それについては認識されていたのか。

山  口:詳しくは伺っていないが、その件についても大学の調査に全て回答された結果としてのレポートが出ている。全てのメールを含めて1つ1つ丁寧に質疑があり、それに対して回答されたとのことである。その結果であるレポートを、私達は尊重し、判断している。

Q:(社会保障)国民会議における昨日の実務者会議では、段階的に簡易型の給付付き税額控除(を導入する)というお話が、各党から上がったということだった。これについて、改めて見解を伺いたい。また、給付付き税額控除のメリットと2年間の消費税減税に伴い懸念されるデメリットについても、見解をお願いしたい。

山  口:給付付き税額控除については、(現時点では)これがベストな対応であるとの意見が多い(と認識している)。公平性をある程度担保できる施策という点においては、私自身も同じような意見である。ただ、金融資産を含めた全ての精緻なデータが揃うまで(実施を)待っていると、時間がかかるというのも事実だと思う。できるところから(段階的に)やっていくという考え方については、妥当なご意見だと考えている。また、消費税(減税)についてはメリットとデメリット(双方が存在する)。(食料品の消費税)8%が減税されることによって、(消費者の)購買意欲にプラス(の影響)があることは確かであるが、2年後に元に戻した際の、購買(意欲)への心理的な影響や事務処理等々の影響がどうなのか(考慮が必要である)。様々な形でメリット・デメリットがあろうかと思うので、そういった点は今(行われている)国民会議等においてしっかりと整理が進められるものと考えており、私達もその結果をしっかりと注視したい。

Q:(社会保障)国民会議の中では、繋ぎとしての消費税減税という前提で話が進んでいると思うが、「段階的に」であれば、消費税減税は実施せずに、先に給付付き税額控除を実施するほうが望ましいとお考えなのか。

山  口:それが一番早く実現可能なのであれば、そう(いう考えもある)かもしれない。実現可能性やメリット等の全体像を、今明確に整理されているところだと思うため、(まずは)その結果を待ちたい。

Q:事業計画や委員会体制の中で、山口代表幹事ご自身の思いや問題意識が色濃く表れている部分どこかを伺いたい。また、「共助成長社会」という表現について、従来の共助資本主義は共助と言いつつも、主役は資本家や資本主義というイメージ(を抱くという声)があった。(共助成長社会は)社会全体にスコープを広げ、成長を追求するという理解でよいのかを伺いたい。

山  口:1点目(のご質問)については、前提として、委員会を設けても1年間固定で活動するとは限らない。なぜなら、社会の状況が変化するためで、委員会の統廃合を含め柔軟に対応していきたい。年度初めに計画し年度末に提言を出すといった活動ではなく、何をいつまでに実現するのが最適かを考えて、随時、(委員会の)構成を正副の代表幹事会で議論し、運用していく。(冒頭に述べた)医療・介護改革委員会だけが重要というわけではなく、全て(の委員会が)重要であるが、新たな領域の委員会として医療・介護改革委員会やAI時代の教育革新委員会の設置を挙げた。テクノロジーの進化や生成AIの進展により、社会や企業で求められるスキルが変化している。私たちに必要とされるスキルは何か、そのスキルを身につけるための教育や制度は何かを、今まさに切り込んで議論すべきタイミングであり、これ(に即した委員会)を組み込んでいる。また、AI戦略委員会においては、チップからAIそのもの、AIインフラ、データ、さらにはエージェントと呼ばれるプロセスまで含め、日本として(AI戦略)全体をどのように設計し、他国とどのような形で協議していくのか(を考えたい)。他にも、ソブリン(AI)の導入方法についてもしっかり議論を行い、実現可能なもの、取り組むべきものから順次、提言として具体化していきたいと考えている。次に、共助資本主義が資本家にフォーカスをしているのかどうかということはあるが、(私が申しあげたいことは)資本家や経営者、従業員(などのステークホルダー)が今日より明日、明日より明後日と少しずつ成長し、プラスのサイクルが回る社会になればよいと考えている。一方で、自分さえ良ければよい、この企業だけ良ければよいという考え方では長続きしない。企業は社会の公器として、また人としてのベースとして大切にすべきものとして、共助という言葉を残した。

Q:伊藤穰一氏が委員長の立場を降りたのは、大学の調査レポート等を踏まえて判断したということか。

山  口:(本件と今回公表した)委員長人事とはリンクしていない。委員会構成と、誰にどの(委員会の)委員長をお願いし実現していくかをベースに考えて判断した結果である。

Q:エプスタイン氏の問題が再燃したタイミングで、伊藤穰一氏の経済同友会で立場の(扱いを)検討していないという理解でよいか。

山  口:委員長人事の前に、伊藤穰一氏に何かしらの措置を講じたわけではない。より前の段階で、本会として判断が必要な時にしっかりと確認している。

Q:確認した際に問題がなかったという理解でよいか。

山  口:その通りである。

山  口:最後に来週、全国44の経済同友会共催の高知大会(第38回全国経済同友会セミナー)が開催される。みなさま、そして高知の(現地支局の)方々にもご参加いただきたい。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)

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