山口明夫経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨
代表幹事 山口 明夫
冒頭、代表幹事就任1か月強の所感、第51回衆議院議員総選挙の結果に言及した後、記者の質問に答える形で、為替動向、消費税減税、対米投資第一号案件の協議、チームみらいの躍進、外為特会の代替財源としての可能性、選挙戦における政策論争や比例代表の名簿不足、国民会議への期待、日米の投資環境、レアアースなどの安定調達への期待等について発言があった。
山 口:まずは、代表幹事に就任してから1か月少々経った感想を申し上げる。既に1年ぐらいお仕事をさせていただいたような感触を持つほど、色々な情報をいただき、様々な方々と会話した。経済同友会の仲間からも叱咤激励いただく中で、ますます本会の位置づけの重要性を理解するとともに、しっかりと努力していかなければならないと改めて感じた。もうひとつは、色々なメンバーと話して、やはり本会は、企業経営者・NPOの代表・アカデミア、企業の中でもスタートアップ企業から何十年も経営されている企業のトップの方々まで、本当に幅広い方々が個人で参加する中で、オープンに日本の現状をどう理解していて、皆でどのように良くしていこうかを喧々諤々(の議論)ができている会だと改めて感じ、(それが本会の)強みだと実感した。(現在は、)それらの意見を踏まえながら、新年度からの事業計画を策定している。経済同友会としてどのような日本社会だったらよいのかを議論し、経済の熱量をしっかりと取り戻そうというフェーズから、供給力の抜本的強化、市場の創出、(さらには)経済活動を通じて国際社会の中でしっかりと存在感のある日本にしていく、これらについて何に(優先的に)取り組むべきかを整理をしているところだ。2030年、2040年でこのような世界になったらよいというものを今策定しているため、本日(は、まだ)ご説明できる段階ではないが、別途共有させていただきたい。
山 口:(第51回)衆議院議員総選挙で連立与党が大きく議席を伸ばしたことは、政策に対する国民の期待の表れだと理解している。消費税減税については、経済同友会としては財政規律と社会保障財源の安定性の観点から慎重な立場を維持しているが、この選挙結果を通じて示された民意を踏まえて、国民会議でメリット・デメリットを整理しながら実現に向けた議論をしっかり進め、その進捗・結果に期待したい。そして本会としては、経済を通じてこの国の活性化に貢献するために、イノベーションを起こす(主体である)企業の構造改革の実施、スキル(アップやリスキリング)、賃上げ(等の)基本的にやるべきことについて、徹底的に周知をして対応していきたい。
Q:衆議院選挙で自民党が大勝し、衆議院では与党で3分の2を確保した。近く発足する第2次高市政権にどのような政策を期待するか伺いたい。
山 口:やはりAIや半導体、量子も含めた成長戦略だ。日本の強みを生かした経済成長に繋がる政策の強力な実現を期待したい。それから、生活の保護と安全において、今の物価高対策(については)税と社会保障の一体改革に繋がる論点だと考えている。国民会議でしっかりと議論されていくことで、その早期実現と結果が示されることを期待したい。
Q:為替について伺いたい。155円台から152円台に変動するなど、かなり色々な人物の発言によって乱高下しているところが見られるが、どのように(現在の為替動向を)見ているか。適切な水準についてはどのようにお考えか。
山 口:為替については、もしかしたら円安になるのではないかという推測のコメントも沢山あり、株価や金利についての様々な議論が選挙前からあった。また選挙後、株価がかなり上昇してきている。円は今日も152円(台)で(推移しており)、円高の方向に振れてきていると思う。色々な判断のパラメータがあるかと思うが、この程度の変化という意味では、それぞれ経済界、企業としては想定の範囲内だと考えている。しっかりと金融政策そして経済政策の動きを見ながら判断していきたい。
Q:消費税減税については、実現に向けて国民会議でしっかり議論してほしいという発言があったが、与党がこのような(3分の2を上回る議席を獲得した)結果になったという民意を受け、減税を行うという方向感を支持するということか。
山 口:支持するかということではなく、やはり国民会議の中でしっかりとリスクやメリットを整理いただき、その結果をベースに私たちは判断をしたい。国民会議で議論することは当然だと思う。選挙(の結果)が、消費税減税に対する期待の表れであるということも1つあろうかと思う。
Q:山口代表幹事ご自身としては、消費税の減税について現時点でどのようなスタンスか。
山 口:経済界としては、前述のとおりである。国民の皆様は、その(消費税減税の)政策に対して期待があるのだと思う。かつ、それに対する効果への期待もある。ただ、前回(の定例記者会見)から申し上げている通り、その成果がいつ・どの程度出るのか、逆にマイナスの(影響が出る)可能性もあるのか、物価が上昇しないか等、そのようなことも踏まえて判断することであると考えている。しっかりと説明していただきたいということだ。十分な効果があるなら実施すべきだと思うし、アセスメントの中でマイナス要素が非常に大きいのであれば、状況を可視化して説明をしていただき、次の対応に繋げていただくということに尽きる。
Q:対米投資に関する第一号案件の協議が始まった。これに対する期待があれば伺いたい。また、赤沢亮正 経済産業大臣は、決定時期について、高市首相の訪米を念頭に置いていると話しているが、それに合わせて経済三団体が同行する可能性はあるのか。
山 口:同行の可能性があるかということに関しては、現時点で特にそのような話はないが、この先の状況の変化によっては、しっかりと検討をさせていただきたい。対米投資については、両者がしっかりとお互いにメリットがある内容に落とし込み、今後作業をしていくところであると思う。オープンかつ迅速な対話を進めて行動に繋げていくことを期待している。
Q:衆議院選挙結果で1つ特徴的に映ったことは、消費税減税を打ち出さなかった、チームみらいの躍進である。今回の選挙結果における民意の表れという点で、どのように捉えているのかを伺いたい。
山 口:チームみらいは、社会保険料の削減を行うべきだということと、AIや半導体、テクノロジーへの投資をしっかり実施していくべきということを主張されていたと思う。それらについて、賛同をされる方々が多かったということは、選挙結果を見る限り明らかである。様々な政策が全てうまくいけば良いが、物価が上がり、社会保険料も上がり、消費税も上がるといった、ワーストケースもある。この(様々な政策の)組み合わせの中で、最も良いケースをこれから整理していくことが非常に重要である。(個別の政策について)ゼロイチ思考(白か黒か)という話ではないと思う。チームみらい(の躍進)については、社会保険料(の削減)について、期待を寄せられている方々が多いことがしっかりと(結果に)表れたということだと考えている。
Q:外為特会の金利収入を何らかの財源に考えられるのではないかという意見もあると聞いているが、山口代表幹事の考えを伺いたい。
山 口:財源として使えるのかどうかは、今後議論されていくのだと思う。1つの財源であると話をされている方もいらっしゃるが、他の(様々な)有識者の意見も踏まえて(検討を進めていくべきである)。(食料品の)消費税(減税)には2年で10兆円(が必要)と言われているが、(代替財源を)どこから持ってくるのかということの1つ(の選択肢)となるのかも含め、これから整理をされるタイミングであると思う。私自身は、ここで判断できるほど全体を押さえているわけではない。
Q:(山口代表幹事が)就任が決まった後の会見で、「結果にこだわる」ということをおっしゃられており、それが何を指しているのかずっと気になっていた。どういうことか教えていただきたい。
山 口:これからいくつか(本会として)提言(を発出する予定であり)、今までも提言させていただいている内容がある。(これらは)提言するだけで終わるのではなく、その実現に向けて、次のフェーズとしてどういった対応策をとっていくのかということまで踏み込み、経済同友会として活動をしてまいりたいということである。現在、事業計画を策定しており、2030年や2040年に「こういう世界だったらいいな」というものを今作り上げている。そこからバックキャストして、いつまでにどういう制度ができ上がったら良いか、もしくはどういう社会システムになったらいいか、どういう制度が実現したらいいかといったことを、整理しようとしている。そのようなことを実現するということが「結果」に繋がる(ことだ)と考えており、(事業計画を策定中の間、)もう少しお待ちいただきたい。正式には、おそらく4月の総会でしっかりと説明させていただく。
Q:今回の選挙戦では、大いに政策論争があって民意が示されたとのお答えが先程あったが、果たして今回の選挙戦において本当に政策論争があったのか。当初から抜き打ち解散であり、しかも史上最短の選挙期間であったうえ、いわゆるイメージ選挙が目立ったという印象を受ける。それでもなお、今回の選挙戦において様々な政策論争が繰り広げられたとのご認識なのか。
山 口:確かにおっしゃるとおり、論争が繰り広げられたかという点でいえば、そこまで深く議論を繰り広げるだけの時間はなかったのではないかと、正直、思うところである。ただし、各政党がどのような政策を実行していきたいのか、その理由も含めて、各党がソーシャルメディアやテレビを通じて相応に説明していたことは確かである。これは個人的な感覚ではあるが、今まで以上に周囲の人々が(政策の)中身そのものに強い関心を持ち始めている点は、過去とは異なる(変化である)と感じているところである。
Q:国民会議では消費税(減税)も、もちろん1つの重要なテーマではあるが、そのために設けるものではないと思う。例えば社会保障の給付と負担のあり方を根本的に見直すなど、山口代表幹事として、この国民会議にもっと他に期待することは何か。
山 口:給付付き税額控除については、(実施までに最短でも)2年程度を要するとの話があったが、前倒し(の検討)を含め、その他にも様々な施策が考えられる。社会保障の一体改革には、先ほど申し上げたとおり多様なパラメータが存在するため、その全体(像)をしっかりと議論し、前向きな方向性を明確にしていくことを期待したい。また、1年、2年、3年、4年、5年といった時間軸の中で、このタイミングでは難しい課題もある一方、5年後にはこうした良い世界になるというグランドデザインや流れを共有していただければ、(国民としても)大きな安心感に繋がるのではないかと考える。あわせて、現時点で(優先的に)対応すべき事項が明確になってくるのではないかと思う。
Q:給付付き税額控除については、例えば国民の資産を把握したり、収入を把握したりすることが技術的に結構難しい、ということも言われている。技術論的に、諸外国の事例も見て、可能なものなのか。
山 口:おそらく、国民資産の把握に加え、(各種)データや地方(自治体)のシステム、さらにはマイナンバーといった仕組みが相互に連携していくことが不可欠であると考える。そのうえで、これらがどの程度のスケジュール感で実現可能な状態にあるのかについては、IT分野で仕事をしてきた立場から(一定の関心はあるものの)、現時点で政府のシステムがどこまで(整備されているの)かを(十分に)理解できているわけではなく、何とも申し上げられない。もっとも、技術的には実現可能な領域であるとは思う。
Q:かつて新浪前代表幹事が、高齢者の定義そのものを見直してもよいのではないかという(趣旨の)ご意見があったと記憶している。この点について、山口代表幹事個人として、あるいは新たな経済同友会として、何らかの考えがあるのか伺いたい。
山 口:高齢者の定義の見直しについては、新浪前代表幹事が、働きたい人が働けるところまで頑張れる社会を作りたいという(趣旨の)お話しをされていた認識はある。(その意味で、)高齢者に限らず、年齢によって様々な区分を設けること自体は、(必ずしも)望ましいあり方ではないのではと考えている。ただ、高齢者(の定義そのものをどのように見直すべきかという点)については、正直なところ現時点で私自身として(明確な)意見を持っているわけではない。ただ繰り返しになるが、年齢で一律に物事を区切っていく時代では、徐々になくなっていると考えている。
Q:今回の衆議院選挙では本来、自民党が330議席を獲得したところ(比例代表制での)候補者が足りずに14議席が他党に渡る現象が起きた。法律上のルールではあるが、本来支持する政党とは(政策が)対立する政党に議席が渡ったことから、民意を反映するという(選挙の)観点から受け止めを伺いたい。
山 口:法律上のプロセスに従った対応である以上、今回の対応はプロセス上には問題がないと判断するしかない。ただ、仰っていることも一理あるので、今回の件を振り返った上で、今後、そのようなケースの対応を協議する必要があるとは思う。
Q:経済同友会として、本件について提言をすることはあるのか。
山 口:提言にも優先順位があるため、事業計画の中において、そのことが本会や経済成長にとって、目指す姿を作り上げるための非常に重要な項目であれば取り組んでいきたいとは思うが、現時点では考えていない。
Q:投資の観点で伺いたい。経営者として、現在の投資環境は日米を比較してどのように見ているか。
山 口:日米の比較というより、企業経営者として考えることは、日本アイ・ビー・エムという日本企業の1つとして見たとき、今(の環境)は生産性を大きく変えられるかつてないチャンスだということだ。驚くほどの生産性を上げることができる様々なテクノロジーツールが出てきており、(その生産性の上昇率は)5%や10%というレベルではなく、 50%や60%まで引き上げられる領域もある。そのような取り組みに果敢に挑戦し、作り上げられた原資をベースに、国内投資、特に重要な研究開発投資、M&Aも含めた事業構造の変革に活用することで、経済は活性化していくと思う。もちろん、賃金への反映もその1つである。どこに投資をするかは、領域によって異なるため、国内、米国、欧州(といった投資先は)経営者それぞれの企業の中で判断をすることになる。今、AIや半導体などに様々な形で投資が盛んになっていることは間違いない。例えば、AIの世界では、 AIを提供する側の企業の投資が盛んになってきているが、(他方でAIを使う側の)企業を見ていると、その作り上げられたAIを活用して新しい素材や新しいマーケットを作り上げ、新しい良い仕組みを作っている。このようなことに多くの企業が目を向けて努力しており、そこから新しいうねりが起きてくると見ている。
Q:AIや量子への投資について様々な言及があった中で、それを支えるレアアースを巡る(情勢が)注目されている。産業のビタミンと言われるようにあらゆる領域で非常に重宝されている一方で、中国を筆頭に供給源は限られている。その中国自体が経済的威圧の手段としてレアアースを使っている。この現状の中で、経済界として日本政府に対して、レアアースの安定調達などに向けてどのようなことを期待したいか伺いたい。
山 口:それはレアアースだけ(に限った話)ではない。企業経営、もしくは産業に必要な様々な材料や部品の調達は、各国間の協力のもとに複数のサプライチェーンの構築を作り上げていくことが極めて重要であり、その支援を(政府に)お願いしたいというのはどの企業も共通に考えている。経営活動を行う上では、成長機会を整理したリストを作成しており、リスクの所在についても同様に考えている。例えば、素材の調達や、災害の発生、人材が枯渇するといった様々なリスクがある。一方で、テクノロジーの進化によって新たなマーケットを創出できる可能性といった様々なオポチュニティも存在する。その(リスクとオポチュニティ)全体を整理したリストを作りながら、経営者は日々判断をしている。リスクを最小化するための様々な活動のうち、企業だけでは対応できないケースについては政府にもご支援をお願いしたい。また、成長領域において規制等によって成長の加速が困難な場合には、そこ(規制の見直し)もお願いしたい。ただ、企業はベースとして、全体の中でどう成長していくかということを、基本的にはリスクを取りながら自分たちで考えていくものである。
以 上
(文責: 経済同友会 事務局)