山口明夫経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨
代表幹事 山口 明夫
冒頭、代表幹事就任の挨拶、現在実施中の衆議院議員選挙に向けた取り組みに言及した後、記者の質問に答える形で、本会新体制の組織・方向性、衆議院議員選挙の争点・大義、消費税減税、原発へのスタンス、政府会議体への参画、2026年春闘、ルイス・ガースナー氏逝去、円安、政策金利の動向等について発言があった。
山 口:1月1日付で代表幹事に就任し、約2週間が経った。(この間、)様々な方々とお話をさせていただいている。まず足元では、経済同友会の事務局のメンバーが今何を感じ、どのようなことに取り組むべき(と考えているの)かについて(意見を伺っている)。また、経済同友会の会員、さらには他の企業の方々等からもお話をいただいている。そうした中で、改めて本会としてしっかりと基本に戻る必要があると考えている。経済同友会は、昭和21年4月30日に日本で設立されており、「経済同友会設立趣意書」というものがある。その中には、「われわれは経済人として新生日本の構築に全力を捧げたい。而して、日本再建に経済の占める役割は極めて重要である。蓋し経済は日本再建の礎石であるからである。われわれは日本経済の再建を展望しつつ惨たる荒廃の現状を顧みて責務の重大なるを痛感する。」といった文章がある。経済同友会は、経済成長を通じていかに日本社会に貢献できるかという点が鍵であると考えており、そこに焦点を当てて、しっかりと取り組んでいきたい。また、実際に本会会員とお話をする中で改めて感じたのは、本会にはスタートアップから、従来型の企業、中小から大企業まで、(幅広い)企業カテゴリー(の経営者)が参加しているという点である。さらに、NPOや学術分野の方々(も含め)、非常にバラエティーに富み、様々な(視点から)ご意見をいただける方々が(在籍して)いらっしゃる。もちろん個人として参加する団体ではあるが、こうした(多様な)力を結集し、チーム力で様々なことを解決していきたいと思っている。現在も委員会など、既に動いているものがたくさんある。4月には(通常)総会を控えているが、今の日本の状況を踏まえ、どのような委員会が必要なのか、また(今後)3か月、1年、2年、3年という(マイルストーンの)中で何を成し遂げたいのかということを、しっかりとマスタースケジュールに落とし込んでいきたい。それ(らの取り組みについて)は、極力(メディアの)皆様とも共有し、「こういうことをやりたい」「今私たちはどの段階にあるのか」といった点を共有できたらと思っている。
山 口:2つ目に、明日衆議院議員の解散(を控えている)ということを踏まえ、本会会員に(現在)アンケートを実施している。解散の是非を問うものではなく、各経営者に今回の選挙で何を争点とすべきか、を聞いている。現時点では、まだ全て(の回答が)集まっているわけではないが、速報としては、経営者(の関心)は成長投資や技術革新の促進策について、特に焦点を当てて確認していきたい(という声が多い)。次点が、外交面での関係強化や安定性。3点目は、やはり「責任ある積極財政」(が挙げられている)。この3つが、(今回の選挙で)特に争点とすべき内容ではないかと考えているというコメントが、現時点では多かった。まだ(アンケートを)締め切っているわけではないので、これが全てであるとは限らないということを申し添えておく。また、経営者として取り組んでいく上で、何を最も重要と考えるかという点については、先程申し上げた経済成長(に向けた投資)、技術革新の促進という点については同じだった。それらをどう利用して、自分たちが経営していくかというのが鍵だと(いうことだ)。さらに外交面では、日中(関係)や米国、その他の国々との関係などの国際情勢が変化する中で、どのように経営していくか、ビジネスをしていくか(という点を重視する声があった)。3点目は少し(選挙の争点とは)異なり、賃上げと人材確保について、更に焦点を当てて考えていきたいという意見が、現時点では多く届いている。(今後)整理ができたところで、別途またこの内容については、皆様にも公表させていただければと考えている。
Q:(山口代表幹事が)就任されて2週間が経った。これまで経済同友会の代表幹事を巡っては、3か月ほどの不在期間があったが、改めて組織をどのようにまとめて活動していくお考えなのか、山口代表幹事として経済同友会をどういった会にしていきたいのか教えていただきたい。
山 口:本会の良いところは、自由闊達で、オープンな議論がどんどん行えるところだと思う。そういった意味では、委員会についてもその時勢にあったものができて、もし不要となれば解消するという形の、もう少し柔軟性を持たせても良いのではないかと思っている。つまり、(現状は)毎年4月に委員会ができて、年度末に向けて決まったスケジュールの中で様々なことが動いていく。それはそれで重要なことであるが、(一方で)世の中の情勢はよりダイナミックに動いているため、委員会の構成もそれに応じた形で、柔軟に改廃をしたり(しても良いのではないか)。そういった点について、代表幹事、副代表幹事、そして場合によっては委員長等(を含めて)皆でオープンな場で議論をして決めていきたいと思っている。本会の事務局のメンバーにも、それぞれの分野にかなり詳しい方々が多く(在籍して)いるため、もっと会員と事務局が一緒になって、あるべきゴールに向けて、チームワーク良く活動できる、そのような会にしていきたいと考えている。
Q:明日衆議院が解散され、来月選挙が行われる。各党から公約も出てきており、その中には消費税減税が盛り込まれている。消費税減税について、2年間という案も恒久という案もあるが、その辺りのことも含めてお考えを伺いたい。
山 口:現在の足元は、物価高、特にエネルギーや食料品などの物価高によって、(国民生活は)かなり厳しい状況にあると認識している。一方で、減税することによって、財政規律の観点からマイナス面や考慮すべき項目も、出てくるのではないかと考えている。ただ、この議論は、消費税を下げるか下げないか、(あるいは)財政規律をどうするかとか、国債をどう位置付けるか(などの個別論点ではない)。政治の世界では、(常に)トレードオフで、様々なものにおいて、こちらを上げればこちらが下がる(といった関係性が存在する)。これを1年、2年、3年、(といった)中長期の観点で、この施策、このボタンを押したらこうなっていく(といった全体像を示すことが重要だ)。例えば、最初は少し我慢しなければならないフェーズがあるかもしれないが、将来的にはこうなるといったグランドデザインやロードマップ(を明確にし)、「あるべき姿」に対して、今どの地点にいるかをしっかりと皆と共有していただきたいと思う。その1つに消費税の話があると考えており、消費税のことに対して云々というように個別の(論点で考える)話ではないと考えている。
Q:今回高市首相が国会の冒頭で解散する(意向を示しており)、来年度の予算が組まれる前の解散ということになる。まずこの点について、大義がないのではないかという話もあるが、このタイミングで解散に踏み切った高市首相のご判断についてどうお考えになるか。また今回の解散が経済界に与える懸念や、投資も含めた経済成長への懸念点があれば、教えていただきたい。
山 口:この時点で(首相の専権事項である)解散に踏み切られたことについて、私達がどうこう言えるものではないと考えている。ただ私は、今回の解散を踏まえて、今まで以上により良い経済成長に繋がる選挙であってほしいし、そのためには皆がしっかりと選挙に取り組んでいく必要があると思う。経済界への影響については、例えば今年の予算は既に決まっており、また補正(予算)もあるため、来年度4月以降どれくらいの期間で(決まるか)。もしかすると年度内に決まるかもしれないが、現時点で経済政策については大きな変更がないと(認識しており)、それほど大きな影響はなく、(着実に)取り組んでいくべき項目だと考えている。
Q:先ほどの、中長期に経済同友会で委員会を設置し、いろいろと考えていきたいという話について、山口代表幹事として取り組みたいことや、新しくやってみたい争点・重点テーマがあれば教えていただきたい。
山 口:魔法の杖があるわけではない。ただ普通に考えれば、今、日本は人口減、労働力不足、インフレ、実質賃金をどう伸ばせるか、それからエネルギー・食料・医薬品などの自給率、そして地方など、様々な課題がある。それらに対して、戦略分野として高市首相は17分野(を掲げ)、さらに危機管理への投資についても、しっかりと道筋を示されていると思う。一方で、逆の観点では、財政規律をどうしていくかという見方もある。そのような中でも、経済安全保障、すなわち国際情勢は日々変化している。結果的に、私達経済同友会としては、そうした状況を常にリスクとして、もしくは機会として常にリスト(アップ)しながら考えていく必要がある。企業がどれだけ売上や利益、そしてそれに伴う賃上げを実施できるかということが一番の鍵だと考える。失われた30年(のように守りに入るの)ではなく、積極投資を行ってイノベーションを起こし、そして効率化(について)もどんどん様々な方策が出てくる。そこで生み出された原資を、賃上げやイノベーション、また事業再編に投資をしていくこと、さらに国内投資をしっかり行うことによって、間接的・直接的に国の成長に間違いなく貢献できると考えている。やりたいことは何かというご質問(に対する答え)というよりは、企業変革を、産業成長も含めてどれだけ注力していくかということが鍵だと思っている。
Q:(就任にあたり)新浪剛史前代表幹事、および北城恪太郎元代表幹事とのやり取りがあったのであれば、(その内容等を)伺いたい。
山 口:これから、前任を含め(過去の代表幹事)の皆さんとコミュニケーションを取りたいと思っている。実際に本会をリードしてこられた方々の経験、知見、助言は極めて重要だと考えており、時間を設けて会話をさせていただきたいと思う。北城氏については、何度か直接(お会いして)会話をした。ご存じのとおり、本会の元代表幹事であり、日本IBMの社長経験者ということで、米国本社とのやり取りも多い中、現役社長(と代表幹事)との両立について、どのようなマネジメントをしていかなければならないかといった相談を率直にさせていただき、助言していただいた。
Q:原発に対するスタンスを伺いたい。
山 口:電力・エネルギーの安定的な確保は、極めて重要だと思う。(そのため、既設の)原発の稼働が必要であることに間違いない。ただし、安定的に(供給する)その前提として、(社会の皆様の)安心(が必要)ということは、軸をぶらさず徹底的に取り組んでいく必要がある。並行して、(既存)原発から次のエネルギーへのシフトについても、技術革新を含め取り組んでいく。このようなフェーズにあると考えている。
Q:新浪前代表幹事となってから、原子力や企業団体献金のあり方(へのスタンス)が変わり、どちらかと言うと政府寄り、経団連の主張と同様になり、経済同友会らしさがなくなった。第二経団連、ミニ経団連と揶揄する意見も聞く。前代表幹事のスタンスを継承していくのか、あるいはかつての青臭い議論をしていたような経済同友会らしさに戻っていくのか、根源的な話を伺いたい。
山 口:何が経済同友会らしさであるかということもあると思うが、私(の考え)はシンプルである。(本会は)企業経営者の集まりであるため、経済活動を通じて日本社会の成長、そして貢献できるための政策は何かを明確に定義し、愚直に実行することだと考えている。それが政府の意見と同じケースもあるだろうし、経団連の意見と同じケースもあるかもしれない。全く逆の意見となるケースもあるかもしれない。パーパス、成し得たい目標からバックキャストして何を行うかをしっかりと考え、なぜそのような意見を発するのか、なぜそれに取り組むのかを共有しながら進めていきたい。その結果、(揶揄されたとしても)全く気にしない。目的に向けてどう取り組むか(ということが重要)である。
Q:経済財政諮問会議の民間議員など政府の要職に就くと、そういう(政府寄りの)主張になっていくという気がする。牛尾治朗元代表幹事は、代表幹事をしている間は政府の要職とは一線を画すというスタンスを取ってきた。山口代表幹事は、仮に経済財政諮問会議などに指名や要請をされた場合、どのような対応を取るのか。
山 口:申し訳ないが、そのあたりについては全く考えていない。政府のそのような仕事の話をいただけることは光栄なことだと思うが、パーパス(を定めバックキャストして取り組む)といった先ほど申し上げたベースは基本的に変えるつもりはない。
Q:間もなく春闘が始まるが、注目は実質賃金のプラス化が実現できるかという見方が多い。他方、米国などを見ると、必ずしも実質賃金のプラス化だけが景況感の改善につながるわけでもないのか(と考える)。例えば、金利が高いとか、格差が広がっているとか、社会不安が広がることは好ましくない。山口代表幹事は今回の春闘でどのような点に注目されているのか。もう一点は、新浪前代表幹事がよく言っていた言葉に「アニマル・スピリッツ」があった。「責任ある積極財政」という言葉が(現状では)非常に踊っているが、ケインズが言わんとしたことは、どのような経済政策を取ったとしても、最終的に民間企業のイノベーション、イノベーティブな発想や行動が経済成長を決めるということだと考える。山口代表幹事は、何スピリッツが最も大事であると考えているか。重要だと考えることを伺いたい。
山 口:冒頭申し上げた通り、結果的に企業がしっかりと効率化も行い、イノベーションも起こす(ことが重要)。あとは価格(が重要)である。日本は非常に積み上げ(方式)である。非常に価値があるものでも、ここ(原価の積み上げで設定した範囲)である。やはり、価値ベースのモデルにどんどん変えていく(べきだ)。サービスレベルが良ければ価格を変え、それが受け入れられる風土にも変えていかなければいけないと思う。それにより、新たな投資やイノベーションが起こり、積極的な事業活動や事業再編、ポートフォリオの変更が起きてくる可能性がある。そこから波及的に良い効果が広がっていくのではないかと考えている。そのようなことから、企業経営者の変革に対する極めて高い覚悟と実行力が、今強く求められる時期である。また、経営を行う上でのリスクは、国際情勢や外交、価格高騰や円安、災害など、いくらでも存在する。企業にとっては(リスクの存在は)当たり前で、起きたときにどう影響を小さくするか、もしくはどのようなコンティンジェンシープランを作っておくか、それらを皆で対応する。その上で様々な(相互の)協力、もしくは政府の支援が必要であれば、依頼をしていく。その意味では、強い企業経営の実行が一番のベースである。春闘について(の注目)は、私は実質賃金である。本会会員のアンケート結果では、昨年同様もしくは昨年以上と回答された方が8割(以上)だった。ただ、金利が上がってくる中で、厳しくなるケースもあるだろうし、これ以上円安が進むと原資が(減ってしまう)ということもあるかもしれない。ポイントは、それでもイノベーションを継続しながら実質賃金をどのように上げていくかということである。それから、生成AIによって生産の効率化や改善が相当できる(ことを言い添えたい)。作業の改善だけではなく、組織自体もさらに筋肉質にでき、成長(分野)のところに人材をシフトすることができる条件や技術が整ってきている。これをどれだけ活用できるかということが、日本の経済界が前に進めるかどうかの非常に重要なポイントである。(生成AIを)提供する企業としても、自ら活用しながら事業を変えている感覚としても、(このポイントが重要であることに)間違いないと思っている。
Q:山口代表幹事が選任された際に、課題解決だけではなくどのような世界を実現したいかを考えて発信していきたいとおっしゃっていた。現時点でこういう世界を実現したいというイメージがあれば伺いたい。
山 口:現在、様々な議論をしているが、独りよがりな目標を立てても仕方がない(と思っている)。ただし、GDPは例えば名目3%、実質1%など、継続的に右肩上がりにしていきたい。また、税と社会保障の一体改革(の議論)もあるが、(目指すべき世界として)安心して生活できると皆が感じられるような世界であることは間違いない。働いている方々が楽しく働き、イノベーションにチャレンジできる。減点主義ではなくポジティブに前向きに議論できる、そのような社会になったらよいと考えている。2月に開催する副代表幹事、一部の委員長に集まっていただく1dayミーティング(という会議の場で)、自分たちがこれまで行ってきたことやあるべき姿について議論し、4月の(通常)総会で共有したいと思う。さらに、あるべき姿を数値化し、それが具体的なゴールとなり、その進捗をスケジュールとTODOで管理していく。そして、状況に応じてそれを変えていく。当たり前のことだが、このようなことを整理して進めたい。(内外に向けて)こうしたことをやっているというのを共有することが極めて重要である。幸いなことに、現在経済同友会のメンバーが1,800名を超え、今月も多くの方々に入会いただいている。この力を結集し、(目指すべき)ゴールを共有し、パーパスをもう一度皆で腹落ちさせていく。
Q:選挙に関して2点伺いたい。先ほどの会員のアンケート(衆議院選挙経営者アンケート)でいくつか争点を挙げていただいたが、山口代表幹事ご自身は何が今回の争点になるとお考えか。また、初めの消費税の質問では、「全体の中で考えることで個別には」ということで、否定も肯定もされなかったように感じたが、マーケットで長期金利がかなり上昇しており、円安が進んでいる状況の中で、経済同友会の代表幹事として一時的であれ恒久的であれ消費税減税は国民の関心事であるため、どのような姿勢でいらっしゃるのか教えていただきたい。
山 口:まず消費税について、減税することによって(国民の負担が軽減される)一方で、マイナスの影響も出る。その全体(像)がしっかりと国民と共有され、納得感があるものであれば実行すべきだと思う。なぜなら、エネルギーや食料(の物価上昇)で今かなり苦しんでいる方々がいらっしゃる。しかし、何かこの(特定の)部分だけという説明の中で、いろいろなことがメリットもデメリットもリスクも共有されずに(議論が)進んでいくことについては、危機感を抱いている。もう一点の選挙の争点については、先ほどから何度か申し上げているが、企業成長が日本に間違いなく貢献するため、成長投資および技術革新の促進について、どこまで、何を具体的に実施できるかを注視していきたい。
Q:先ほどの消費税減税について、マーケットとしては財政懸念がかなり広がっている状況だが、この点についてはどのようにお考えか。
山 口:マーケットは確かにそれ(消費税減税)によって財政規律が少し厳しくなるのではないかと(見ているのだろう)。それによって(長期)金利が上がり、米国等との金利差も中々予定通り縮まらず、円安も進んできているというこの事実については、しっかりと冷静に見ながらいろいろと判断をしていく必要があると思っている。そこについてこうしてほしいというような要望はまだ考えていない。
Q:新浪前代表幹事が掲げられた共助資本主義という考え方について、どのように受け止めているのか。山口代表幹事(自身)も社会貢献活動に積極的に取り組まれていると承知しているが、この考え方にこれまでどのように共鳴していたのか。会員の方々との話を進める中でどのように受け継いでいかれるのか、あるいはバージョンアップしていきたいとお考えか。
山 口:共助資本主義をリセットするつもりは全くない。ご存知の通り、自助、公助、共助というようにお互い助け合うということ。もしくは国の支援など様々なものがあるが、ソーシャルセクターとの協業は非常に進んでいる。これは新浪前代表幹事のリーダーシップの下で(推進されたことであり、)素晴らしいことである。共助(資本主義)という考え方に基づいて日本のNPO、それからソーシャルセクターとの連携を今まで以上に強力に密にして、(そして)それが間接的に経済成長にも繋がると考えているため、(質問への)お答えとしては、しっかりと継続して取り組んでいきたい(ということだ)。ただ、メッセージの出し方として、「共助資本主義による~」というような出し方では(必ずしも)ないかもしれない。経済成長をトップに置き、そのための手段として、共助資本主義にしっかりと今まで以上に取り組んでいく。このような位置づけになると考えている。
Q:26年春闘については、大企業を中心に非常に積極的な姿勢が出てきている一方で、中小企業の間では賃上げ疲れという声も聞かれるところだが、中小企業への賃上げの継続や波及について、どのような見通しをお持ちか。
山 口:そこは価格転嫁ということで、しっかりと大企業も今まで以上に実施すべきだと思う。ただ、そのベースとしては先ほど申し上げた(通り)コストの積み上げではなく、価値ベースだと考えている。大企業であろうが中小企業、スタートアップであろうが、価値が非常に高いものはその価格をしっかりと定義できる。そのような世界へ(転換していくことが必要であり、)大企業だから高いとか、中小企業だから安いというような話ではなく、(価値ベースによる価格転嫁の)モデルをどこまで作り上げるかが鍵なのではないかと考えている。
Q:2025年末にルイス・ガースナー氏(以下、ガースナー氏)が逝去された。IBMにとっては立役者だと思うが、山口代表幹事はガースナー氏と接点はあったのか。
山 口:(ガースナー氏とは)昨年の4月に会った。それまでも数年間に1回は会い、会話をしている。鮮明に覚えているのは、会うたびに彼が口にする「お客様を向いて仕事をしているか」、「社員は元気なのか」という質問だ。お客様(という言葉)については(印象的な)エピソードがある。例えば、企業(IBM)のラウンドテーブルでは、ガースナー氏に社員が様々な質問をする機会がある。ある参加者から聞いた話では、アルゼンチンのIBMの社長が自己紹介をした際に、「そんなこと(自己紹介)には興味がない。あなたがお客様にどんな貢献ができているのか、何をしようとしているのかが一番興味がある。それを話してほしい」と(述べたそうだ)。(ガースナー氏は)そういう(お客様志向の経営者の)タイプである。徹底したお客様志向を彼は追求し続けていた。(他にも)私が米国において1泊2日で(ガースナー氏と)会った際、4~5人で議論する機会があったが、夜に話をしている最中に目を(見開いて、私を)直視した。(いわゆる)蛇に睨まれたカエルというぐらい(緊張し、)手汗が出てきた。人生でそこまで緊張したことはなかった。真剣に日本のお客様のために仕事をしているのかを冷静に聞いてくる。高圧的な方ではないが、そういう(お客様志向である)ことを非常に感じた。
Q:足元の円安について、(現在の為替相場が)適切なのか、行き過ぎているのか、あるいはさらに円安に進むことが望ましいのか、経済同友会のスタンスを伺いたい。また、日本銀行の金融政策について、本日から金融政策決定会合もある中で、特に政策金利について山口代表幹事のスタンスを具体的に踏み込んで伺いたい。
山 口:中々難しい質問だ。金利、為替、そして株(価)も日々1,000円上がったり下がったりするような状態である。ただ、円安に関しては、経営者の観点からもう少し円高に振れてもいいのではと思う。金利については、おそらくプラスになっていくだろうが、全体の中で企業への影響を考えていくしかない。経済同友会においては最新の状況を踏まえた議論はまだできていないが、整理をして共有したい。
Q:政策金利の今後の見通しについて伺いたい。
山 口:政策金利については(日本銀行の金融政策のため)何とも申し上げられない。ただ、今の米国と日本の金利差を少し早い段階で詰めていく(縮めていくこと)が一番重要だと考えており、期待したい。
Q:(金利差を縮める)ペースについては。
山 口:他の影響もあることから、金利だけを単体では考えられない。
Q:山口代表幹事はテニスとゴルフがご趣味と聞いているが、経済同友会をゴルフコースに例えた場合、どのようにコースを回っていきたいか伺いたい。
山 口:まずは、チョロではなくクラブの真芯に当てたい。やるからには、アベレージスコアではなく、それなりのスコアを出した上で、楽しいゴルフだったなと思えるようにしたい。途中でバンカーに入ろうがOBに入ろうが、仕方ない。そういうこともあるだろう。 だが、やるべきことはやって今日のゴルフは良かったと思えるようにしたい。
Q:経済同友会の活動としてもアベレージ以上のものを出していきたいか。
山 口:その通り。ゴルフでも野球でもしっかりと高みを目指すことで、やる気が出てくるので、勝ち負けだけの勝負というのもおかしな世界であることは十分理解をしているが、そういったこと(勝ち負け)も加味しながら、活動したい。
以 上
(文責: 経済同友会 事務局)