代表幹事の発言

岩井睦雄経済同友会代表幹事代行の記者会見発言要旨

公益社団法人 経済同友会
代表幹事代行 岩井 睦雄

冒頭、昨日公表した意見(経済同友会「新政権に望む-新たな経済社会への転換にむけた合意形成-」2025年10月21日)、韓国ミッション、新代表幹事選考に言及した後、記者の質問に答える形で、以下の発言があった。

岩 井:まず新政権への期待について、昨日、新政権が発足した段階で皆様にお配りしている意見を取りまとめ、公表した。この意見の概要についてご説明したい。4点ほどポイントがあるが、まずは日本の憲政史上初の女性総理誕生を歓迎したい。社会そして政治における多様性を加速するきっかけとなることを期待している。内外の課題が山積する中で、新たな政権の連立の枠組みについて、連立の内側だけではなく野党も含めて、現実を踏まえて1つ1つ政策の合意形成をして実現していただくことを強く求めたい。(2点目に、)新政権で高市首相が「責任ある積極財政」と述べられている。積極財政で景気を刺激し、今の生活を改善していくことは非常に大切なことだが、「責任ある」という部分をぜひ強調したいと思う。日頃から(本会で)申し上げている通り、エビデンスベースでしっかりと効果的な支出を、説明責任を持ってやっていただく。またその効果について検証していく。そういったワイズスペンディングの徹底が不可欠で、限られた財源のもとでしっかりとやっていただきたい。また、(3点目に)人手不足が常態化する中で、人材の流動化、そしてスキルをしっかりと向上できる仕組みを通じて、企業の新陳代謝を促し、経済のダイナミズムを回復させることが重要である。グリーントランスフォーメーション(GX)、DX、ヘルスケア、自動運転、ロボットといった成長分野を、これから民間が投資していく後押しになるような規制改革も着実に進めるべきである。それから4点目は、トランプ政権についてで、今度来日されるとも聞いている。トランプ政権また対中の追加関税といったこともあり、国際通商環境がかなり不透明感を増している中で、日米(関係)については今回の(関税)合意を元に、両国が緊密に連携し、サプライチェーンの安定化と公正な貿易秩序の維持に努めることが大変重要だ。今回の合意を着実に履行し、それが日本の経済安全保障、産業力の強化に繋がる結果になるような形で進むことを期待している。

岩 井:2点目に、本会の韓国ミッションについて紹介をしたい。明日10月23日から24日の2日間で、昨年に続いてミッションを韓国に派遣する。約30名の経営者が参加する。韓国貿易協会との4回目になる日韓経済ラウンドテーブルや韓国科学技術院(KAIST)の韓国AI研究所をはじめとして、先端技術開発や現地の視察、経営者との意見交換、政府要人との面談を予定している。今までの経緯だが、2024年より、それまであったアジア委員会から独立した韓国委員会を設立した。2024年5月に私も参加した第1回日韓経済ラウンドテーブルをソウルで開催した。その後、継続的に韓国貿易協会と年2回、日本と韓国で交互にラウンドテーブルを開催し、日韓経済協力をテーマに意見交換の場を設けてきた。前回は2025年5月に大阪で実施した。この韓国委員会では日韓60周年を機に、韓国貿易協会との共同提言の発出を目指している。日韓で協力できる分野として議論を重ね、AI時代の日韓産業協力として、医療・ヘルスケアに焦点を当て、今回のラウンドテーブルにおいて最終的な提言内容を討議し、共通理解と合意を形成した上で年内に共同提言の発出を予定している。

岩 井:最後に3点目だが、新代表幹事選考の進捗状況についてご報告させていただく。まず10月9日に開催された臨時の理事会での審議を経て、新代表幹事の選考プロセスを開始した。10月10日に本会幹事、1,700名強の会員の中の約300名強だが、この方々に役員等候補選考委員会の幹事委員の立候補・推薦の受付を開始し、一昨日の10月20日に締め切った。8名を超えて立候補・推薦があったため、この方々の中から(まずは推薦された方への諾否を確認し、今後)選挙を行い、8名に絞っていくというプロセスを経ているところだ。その後、役員等候補選考委員会を開催していくことになるが、また新代表幹事選考の進捗があったら、適宜ご報告したい。

Q:新代表幹事選考の日程、および任期について、決定していることがあれば伺いたい。

岩 井:プロセスについては、まず(役員等候補選考委員会の)委員を決める。(定員以上の立候補や推薦があれば)選挙等を行い、(委員を)決定次第、役員等候補選考委員会を設置する。開催回数や決定期限を定めることができない案件であるため、今回の(会員倫理審査会)でも議論になった資格・資質要件も踏まえ、人選の前に(選定の物差しとなるものを)議論し、その後に具体的な候補者を絞り込んでいく。進捗があれば、こういう(定例会見のような)形に限らずお伝えをしていきたいと思っている。手続き的には、(臨時)幹事会を開催後に臨時総会をしていくことになるが、具体的な日程はまだ申し上げられないことをご理解いただきたい。任期については、残りの(来春までの)任期だけの人を決めるというやり方もあるが、今回議論した中では、新たに2期4年間をやっていただく方を選ぶことを考えている。通常は来年4月から4年となるが、空白期間を減らすために臨時総会で(新代表幹事を)決めたい。ただ、そこから4年間では(期間が)中途半端になるので、(就任から来春までの)その間も含めて、変則的に4年プラスαという(任期の)形にしたいと思っている。

Q:政府出資の会社が経済団体のトップになることについて、その是非がよく語られるが、その点についてどのように考えているか。経済同友会は個人による資格で入会するため、所属企業にこだわらないということか。

岩 井:一般論として、資格については、年齢などの要件や現役の経営者なのかといった部分がある。資質については、人格などもあるが、代表幹事として政府に対して厳しいことや、中長期的にあるべきだと思うことをしっかり発信することが必要である。その中で、今おっしゃったような(政府出資がある等の)要素がマイナスに働くのか、そのようなことを(役員等候補選考)委員会で議論しなければならないと思う。これまでも議論をした上で歴代の代表幹事を選んできた。特に、規制業種の方はどうなのか等、様々な議論が出てくると考えている。

Q:例えば、たばこ(産業)のような健康的、あるいはESG的に議論を呼びそうな業種等(に所属している候補者)についても、検討の対象になるのか。

岩 井:それ(所属企業の業種等についての議論)はあると考える。特に、新浪前代表幹事が選出される際も、グローバルに通用するといった発信力のみならず、そのような(議論を呼ぶ業種かという)ことも考えた。おっしゃる通り、たばこ(産業)の場合、日本以上にグローバルにおける位置づけが非常に難しい部分があると思う。人物だけではなく、そのような(所属企業の)要素は、当然議論すべきことだと思う。

Q:(役員等候補選考委員会の)委員のうち、幹事委員8名以外の副代表幹事2名と監査役1名は、岩井代表幹事代行が指名するのか。

岩 井:本来であれば、代表幹事が指名するが、(今回は)代表幹事代行ということで、私から指名する。恣意的に選ぶのではなく、改選期ではない副代表幹事の方(から選ぶ)とか、属性的にも多様性が出るように(指名を)する。また、監査役も3名のうち、毎年同じ人ばかりにならないように指名していく。

Q:副代表幹事2名は、在任期間の長い方から(優先的に)指名するのではなく、フラットに選ぶのか。

岩 井:その通り。ただ、改選期を迎える方は除く等、考慮しながらやっていきたいと思う。

Q:次の代表幹事の候補者について、岩井代表幹事代行としてはどのような方に就いてほしいと感じているのかを伺いたい。

岩 井:まさに、役員等候補選考委員会において重視して議論していこうと考えている。やはりこのような状況であるため、まず本会内の融和も非常に大切であると思う。偏りなく、長く在籍している大企業の経営者も、新しく入会してきたベンチャーの方も、皆がその(新代表幹事の)方のもとで一緒にやっていけるということを特に考慮しなければいけない。また、今の政治情勢や国際情勢に鑑み、本会としてどの部分でどのように貢献していくのかということを見ていかなければいけないため、人選に入る前に、そのような(選定の)物差しを(定めて)一人ひとりに当てはめて(人選して)いくという過程を踏むことになると思う。

Q:高市政権が発足したタイミングで、既に様々な発信が行われている。政治と経済は密接に結びついていると思うので、高市政権への見解について伺いたい。石破前政権との違いなどがあるか。

岩 井:自民党以外への政権交代があれば、また大きく異なる形になると思うが、(今回は)自民党を中心とした政権であり、連立の相手が変わる中で、自民党の考え方と日本維新の会が共に実行していきたい部分が整理された。一方で、まだ整理しきれていない部分もあるように思う。こうした(枠組みの)政権であるため、私たちの主張が政権(交代)によって変わることは、基本的にないと考えている。中長期的な日本のあるべき姿については、私たちなりの考えを持っており、今後もそれを提言し続けていく考えである。例えば、高市首相は選択的夫婦別姓について比較的否定的な立場を取っていると思われるが、(だからといって)私たちが政権に合わせて(従来の)主張を引っ込めることはない。経済界の女性が活躍するという観点からも、(姓を)選択できることは極めて重要であると考えており、そういった主張を変えることはない。

Q:一方で、高市首相も今(話に出た)個別の争点において、むやみに女性の権利を制限するという立場ではなく、より実務的・現実的な対応(を重視しているように思う)。(具体的には、)旧姓の使用を通称としてより拡大していけばよいのではないかという(考え方であり)、強硬な反対とはやや異なる印象であるが、その点については、今後議論を深めていくということか。

岩 井:おっしゃる通りである。高市首相はこれまでも非常に政策に通じていらっしゃり、深い考えを持たれていると思う。首相として、今までの主張の一部を強調されるのではなく、首相としての責任を持って、各党ともしっかりと連携をしながら、現実的な解を出していただけると期待している。

Q:冒頭、代表幹事の任期が2期4年+αというお話があったが、こちらについては確定という理解でよいのか。

岩 井:(新代表幹事の任期)自体を総会で会員の皆様に承認をいただくという前提だが、その形で(2期4年+αの任期)役員等候補選考委員会、幹事会、それから総会に提案をしていくという方向で考えている。

Q:(新代表幹事の任期について)2期4年というのは、2026年4月からの2期4年ということで、(代表幹事に就任してから)2026年3月までが+αということでよいか。

岩 井:その通り。

Q:今回(の会員倫理審査会では)、代表幹事の資質(要件)について議論が分かれたと思うが、これからの役員等候補選考委員会において、(代表幹事選定の)物差しを決める中で、岩井代表幹事代行が最も重視する資質について伺いたい。

岩 井:本会の(代表幹事)は経済界の経営者1,700人強を統率する象徴なので、まずは、これまでの(経営者としての)実績(が大切)。経営者として会社でどのような変革を行い、どのようなことを成し遂げてきたか。その上で1,700人強を統率して、皆さん(会員)がその人(代表幹事)と一緒にやっていきたいと思う人格があるというのが一番大切なこと(である)。特に今回は、以前にも申し上げたが、(前代表幹事の資質要件について)当会の中でも意見が分かれた部分もあったので、それを(分断させずに)統合していく人格が非常に大切だと思う。

Q:冒頭で、「責任ある積極財政」というところを強調されていた。自民党も日本維新の会も、この「積極財政」という言葉を合意書に入れているが、経済同友会では積極財政が進むことに関する懸念をどのようにお持ちなのか。改めて伺いたい。

岩 井:現在の財政状況の中で、積極財政(を進める)ということは、税収などの後ろ盾が(十分で)ない中で走っていくということで、(積極財政を進める方向性を受けて)長期金利もじわじわと上昇しており、こうした動きは国債の再発行など(財政運営)にも大きな影響を与えると考えられる。したがって、そうした制約条件を十分に踏まえた上で、積極財政や物価高(対策)、生活が苦しい層へ(の支援)などを、効果を求める分野に的確に実施することが重要である。その施策が数年後には税収として戻ってくるような形を(目指し)、しっかりと検討してもらいたい。(いずれにしても、)財政と国債の発行・再発行(の動向)については、引き続き注視していく必要があると考えている。

Q:正直なところ、この「積極財政」の4文字には岩井代表幹事代行は驚かれたのではないか。

岩 井:国は単年度で行った場合の積極財政(の効果)を考えるが、(一方)企業人としては、やはり何かに投資しなければリターンを得られないので、まさに良い投資や中長期的な施策となる分野に、しっかりと資金を投入してもらう(ことが重要である)。また、先ほど述べたように、それに伴い企業がそこを呼び水として様々な取り組みを行えるよう、規制緩和やベンチャー支援などが適切に行われることも必要である。(こうした施策が)中期的に(成果として)還元されることが見通せられれば、積極(財政)だからといって(必ずしも)問題があるわけではないと考えている。

Q:昨日、高市政権が発足し、本日には閣僚の仕事の引き継ぎ式も始まった。この中で、閣僚の顔ぶれについてどのように感じているかお聞きしたい。初入閣も今回かなり多く、国土交通大臣に関しては自民党から16年ぶりの起用である。また、財務大臣についても、これまでより財政拡張的な方向性が強い人物が就任するなど、従来と傾向が変わってきている。改めて閣僚の顔ぶれを踏まえ、高市政権への期待や申し伝えたいことがあれば伺いたい。

岩 井:たしかに初入閣の方もいらっしゃるが、主要な閣僚には経験者をしっかりと配置されたと思う。また、報道によれば高市首相から(各閣僚に)明確なアジェンダが示されているということである。それぞれの閣僚が素人であったり、暴走したりすること(への懸念)はなく、高市首相が目指す政策を適切に実行していただけると期待している。

Q:(新代表幹事の)選考プロセスの件については、来年4月から後任の方(の任期)がスタートするということだが、新政権も発足しており、できる限り早く(経済同友会の)顔を決めたいといった部分もあるかと思う。(選考においては)どこを重視するか、幹事(委員の8名)を誰にするかという点も含めてやることも多いと思うが、そういった選考プロセスの進め方のスピード感や、どのように進めていきたいかについて改めて教えていただきたい。

岩 井:以前にも少し申し上げたが、今の理事会において代表幹事を決めるやり方もある。しかし、私たちは、これから4年間(代表幹事を)務めるという人物を、適切なプロセスを経て選びたいと考えているため、必要なプロセスが当然生じることになる。例えば、通常の幹事委員の選考プロセスについては(募集期間を)もう少し時間をかけて行ってきたが、今回は立候補(および推薦)までの期間もできるだけ短縮した。9人以上(の候補が)いる場合には選挙を行わなければならないが、それもできるだけ最短で実施する。ただし、瑕疵が無いよう十分に配慮する。さらに、幹事会で内定した後には、法定で定められた総会招集の期間(3週間)を遵守しつつ、プロセスをできる限り短縮する。ただし、審議の過程がどの程度紛糾するかによっては、追加の対応が必要になる場合もある。また、これから決まる(選考)委員の方々もおそらく多忙であるため、どのように時間を確保するか(も課題だ)。その中で、間延びさせず、空白期間をなるべく短くしつつ、正当性のある人物を適切なプロセスで選ぶことを心がけて進めていきたいと考えている。

Q:幹事(委員)の方を決める選挙は既に始まっているのか。

岩 井:今は(9名以上の幹事委員の)ノミネートが挙がってきている(段階な)ので、特に推薦(で選出)の方の諾否を確認しなければならず、その確認をしている段階である。

Q:選挙ということは、(投票等の)期限が決まっているのか。

岩 井:これから発出するという段階である。

Q:(新代表幹事の)選考について、新浪前代表幹事の意見を一部反映させるのか。また、現在、新浪前代表幹事は何か役職に就いているのかを伺いたい。

岩 井:代表幹事と代表理事を辞任しており、現在は会員としての身分だけがある。今後の役員等候補選考委員会においては、代表(幹事)が空席の中でやるので、新浪前代表幹事の意見を反映させるということは考えていない。

Q:新代表幹事(選考)のスケジュールについて、(経済三団体では)1月の頭に賀詞交歓会や(各経済団体のトップ)年頭インタビューもあるが、本当に(代表幹事)代行(が担う形)でいいのか。そうなると(代表幹事選任の)日程が見えてきている気もするが、その辺(のスケジュール感)について伺いたい。

岩 井:その点も考慮したいと思う。ただプロセスによるため、今の段階で、絶対にここまでに(新代表幹事を選任する)ということは申し上げられない。そこ(新年の主要行事)はおっしゃっている通り、意識しなければならないとは思っている。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)

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