代表幹事の発言

新浪剛史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

公益社団法人 経済同友会
代表幹事 新浪 剛史

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冒頭、骨太方針2025に言及した後、記者の質問に答える形で、日米首脳会談における関税交渉、日本製鉄によるUSスチール完全子会社化の米国政府承認、自動車関税、訪日外国人向け免税制度見直し、自民党による参院選に向けた給付金政策、物価高対策等について発言があった。

新 浪: 私も関わっている骨太方針についてコメントさせていただきたい。3年間ベースアップを含めて賃上げをしてきたが、少し円安が是正された中、来年度の決算が少し厳しいという発表が大手企業から既に出ている。そういう減収減益が予想されている中で、新たな4年目もCPI(消費者物価指数)プラスアルファでしっかりと賃上げのモメンタムを作り、いわゆる社会的ノルムにしていくことが本当にできるかというのは、毎年毎年正念場ではあるが、この正念場を乗り切っていかないと(いけない)。今、実質賃金プラス1%を目指すということで、これはこれですごくいいことだと思うが、企業としては結構これから苦しいなと(思う)。しかし賃金を上げないと、当然のことながら社員の生活は厳しくなるのは明確であるため、社会的ノルム、そして、必要な前向きな人材への投資ということで、企業としてやっていかなければならない。これをこれからしっかりとできるようにしていく(ために)、まずは大企業から(賃上げの継続を)していく必要があるのではないかと思う。まさに正念場だ。これを乗り切って、本当の意味の社会的通念にしていくことができるのではないか。消費者物価を超えて必ず賃金が上がっていくことが定着していけば、基礎年金等の将来に対する色々な問題があるにしても、ある一定の安定、そして安心感というものが広がっていく。これがこれからの企業にとって、またデフレが終わって新たな経済社会ができていく上で、大変重要な正念場ではないかと思う。従って実質賃金プラス1%を実現するというところには、結構逆風が吹いているところもあるため、しっかりとまずは大企業がスクラムを組んで実現していくことが大切だと思う。そしてもう1つは、働く方々の可処分所得を増やしていくという意味では社会保障改革がすごく重要で、その根幹をなすのが応能負担だ。この応能負担をしっかり実現していくことが必要で、年齢ではなく払える方がしっかりと払うという体制に変えるのが、昭和、平成という時代の社会保障の仕組みから、令和の時代に合った仕組みにする大きな転換点である。これをしっかりやり遂げていくことが必要だ。そして失われた30年を超えて働く方々の意欲を作っていくという意味で、すごく重要だ。今回の骨太方針はデフレを脱却し、本当の意味で経済を活性化していく。この第1弾の骨太(方針)になるぐらい重要なものだと思う。そして、今後考えていかなければならないのは、世界を見回して、今政権は大変ご苦労されて米国とのいわゆる関税問題についてご努力されていると思うが、これについてはなるべく日米の関係に鑑み、早期に解決をしていただき(たい)。本当のところで今後考えていかなければならないのは、米中(間の競争)の根本はAI覇権争いになるというのがもう既に現れていることであり、AIの技術に出遅れないように、関連する半導体や様々な技術が関わり、そしてAIを使った結果として、新たな技術も開発されていく。これをやはり日本としても、より進めていかなければならない。その上ではやはり経済安全保障という観点からすると、米国とこの分野は一緒に進めていくことが適切だと思う。経済安全保障以外のところは、中国を中心とした色々な国々との貿易、通商、投資といったこともあってもいいと思うが、やはりAIに関する経済安全保障を早く日米でしっかりと(進め)、そしてそれに関係するような韓国やライク・マインデッド・カントリーの国々と一緒になって、新たなサプライチェーンをしっかりと作っていくことが大切である。早くそのような議論が日米間で出来ることを祈念している。技術革新は日本にとって、より進めていかなければならないところで、その部分も骨太(方針)には書かれているが、AIの覇権は大変重要なことになってくる。その意味で地経学というものが地政学とともに重要な時代になり、それ自身が経済の趨勢を決めていくこともあるため、早々にアライアンスを米国(等)と、米国(との)アライアンスを見出しつつあるという議論もあるが、この分野はやはり米国をしっかりと繋ぎ止めて(共に)進める、そういう体制を作っていっていただきたいと思う。最後に、今長期金利が上がっているということもあり、ワイズスペンディングをしっかりと行い、私は「pay as you go」、野党の皆さんも何かを新たに財政で支出するのであれば、その財源はどこにあるかを明確にしてやっていくべきだと(思う)。 そしてまた、ワイズスペンディングのベースであるEBPMEvidence-based Policy Making)をしっかりやるべきだと思う。これらについては613日の代表幹事コメント「『経済財政運営と改革の基本方針2025』等の閣議決定について」を既に公表しているが、大変重要な骨太方針だと思い、(改めて)コメントさせていただいた。

Q:カナダでG7サミットが始まり、日本時間の今日明け方には日米首脳会談も行われた。(今回の会談では、)一連の関税措置について大枠での合意の可能性が焦点となっていたが、石破茂 内閣総理大臣は、今なお双方の認識に一致しない点が残っているとして、担当閣僚に協議の継続を指示した。総理からは、例えばという形で自動車が本当に大きな国益である旨の発言もなされたが、日米の担当閣僚が4週間連続で協議を重ねてきた中で今回の首脳会談の結果に至った点について、受け止めを伺いたい。

新 浪:今申し上げた通り、(これまで)何度となく赤澤亮正 経済再生担当大臣を中心に、武藤容治 経済産業大臣も(現地に)赴き(交渉を)重ねてきたが、先方は自動車に関する関税について神経質なほど厳しいスタンスを取っていると(感じている)。むしろ(関税を)引き上げる可能性すら示唆している状況にあり、糸口が掴めないことは本当に残念である。その中には、エモーショナル(な要素)もあるのではないかと(考える)。米国の大統領を「TACOTrump Always Chickens Out)」などと揶揄される発言が(報道される中で)、こうした言動でさらに増幅させてしまうため、(冷静に交渉を進める上では、)あまりそうした発言は控えるべきだ。しかし施政者としての立場において、今回の交渉は非常に難しいものとなっている。先方がむしろ(関税を)もっと上げてもいいと考えている状況の中で、日本側にとって(関税)引き下げを引き出すには、相当な(交渉)カードを用意しなければならない(状況にある)。以前と比較して、時間の経過とともに(交渉)環境は悪化している。以前であれば、造船業やアラスカのガス(開発)などが(交渉)カードとして考えられていたが、現在では、そういったものは関税交渉がなくても(日本から打診を)行うであろうと言われている。つまり、(日本側が関税引き下げを勝ち取るためには、)各国に対して(説明できるほど)の大きな何か(カード)がなければならない状況に至っていると想像する。例えば、(米国産の)コメを毎年一定量輸入する、あるいはこれまで日本側がNOと言ってきた分野をオープンにするなどといったことに踏み込む必要があるかもしれない。特にコメの問題については、まさに制度(設計)の議論が続いている段階であり、すぐに結論を出せる状況にはない。消費者側(の価格)が高い一方で、生産者側もようやく(価格水準が)高くなり、軌道に乗りつつある中で、コメをすぐに米国から追加輸入する判断をすることは容易ではないと思う。このように、(交渉)環境は時間とともにより難しくなっており、今後の交渉も引き続き困難な展開が予想される。10%(の関税)はすでにマストとされ、自動車(関税)については一層頑強な姿勢が取られるようになった。それがゆえに、日本経済にも若干の暗雲が立ち込めつつある。(特に)自動車関連企業は大変多いので、交渉は引き続きやっていただく(必要がある)が、(日本)経済を活性化させるためには、民間が保有する約350兆円の資金を国内投資に振り向けられるよう、規制緩和・改革(を大胆に進めるべきである)。例えば、今回の骨太(方針2025)にも盛り込まれているヘルスケア(分野)については、私が10年ほど(提言し)続けてきて、ようやく取り上げられるに至った。予防(医療)に関連する規制を緩和し、市場を創ることで国内経済の活性化を図る(べきである)。DX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)だけでなく、ライドシェア、混合診療、混合介護といった分野にも民間投資が投資しやすい(新たな)フロンティアを(早急に)創出すべきである。コメにおいても、今後大規模での生産などが行われるのであろうが、そのための規制緩和など、民間投資が促進される環境整備が必要である。また、人手不足(の課題)については、AIDX(の導入)によって投資を呼び込む(新たな)仕組みを構築すべきである。こうした取組を早急に実行することで、今まさに厳しさを増す経済状況を払拭し、テクニカル・リセッションに陥ることを回避することが重要である。さらに、社会保険料を引き下げ、(可処分所得を増やすことで)働く方々が消費しやすくする(施策も重要である)。今は大変なピンチであるが、(逆に)30年間行ってこなかった改革を進める好機でもあると考える。既得権益を打破することで、新たなビジネスやスタートアップの創出を進めるよう切り替えていく必要がある。このように骨太(方針)に盛り込まれている施策を(一つひとつ着実に)実行に移していくことこそが必要であると思う。

QUSスチール買収計画を巡り、日本製鉄が完全子会社化とする形での買収が米国政府から認められた。こちらについての受け止めをお願いしたい。

新 浪:日本製鉄の幹部の皆様が非常に粘り強く交渉を重ねられたことについて、私は賞賛に値すると考えている。バイデン前米大統領の時代にこれほどまでに否定されても粘り強く(交渉を)続けたという事実は、日本製鉄にとってプラスであると同時に、米国側に対してもプラスになるということを十分に説得できた証であると受け止めている。これからPMIPost Merger Integration)、すなわち統合プロセスが始まるが、(統合を進める中で)この買収が(米国経済にとって)プラスであることがますます明確になってくるものと思う。黄金株に関する議論もなされているが、日本製鉄がUSスチールを買収することは、米国経済にプラスとなるものであり、加えて技術的(な面でも大きな意義を持つ)。造船もなかなか厳しい状況にある中で、(高品質の)鉄鋼を(安定的に)供給できるようになる(点も米国にとって有益である)。また、大統領が繰り返し主張している通り、「米国の車は米国で作れ」との方針のもと、良質な鉄鋼の安定供給は重要な役割を果たすこととなる。こうした技術移転が早期に進められれば、米国経済全体に対するプラス効果は一層明確になるはずであり、黄金株の議論以上に「米国にとってプラスだ」との認識が広がるものと考える。インテグレーションは一定の時間を要するであろうが、(最終的には)その有益性がより明確になってくると考えている。私自身、以前の定例記者会見においても述べた通り、この買収は米国にとってもプラスであり、実現可能なものであると(考えていた)。米国という国は(基本的に)経済を優先するので、その意味で合理的な判断をしたと(いうことだろう)。黄金株の話については、大統領が自ら把握・掌握している姿勢を国民に示す(ための政治的な)側面もあると理解しているが、今後はやはり実務面でのリアリティ(が問われる段階)に入っていくものと認識している。

Q:冒頭の日米関税交渉において、時間を要した分(交渉の)条件が悪くなったのではないかという話があったが、やはりゆっくり(交渉を)し過ぎた点があり、時間を区切って進めるべきことは進めた方がよかったということか。

新 浪:交渉は「what if」であり、色々なことが考えられる。自動車の関税交渉に負けたか否かはわからないが、(交渉の)環境は悪くなったのではないか。このような状況になることを結果的には想定できなかった。しかし、後から戦術が悪かったと言っても仕方がないと思う。むしろ、先ほど申し上げたような経済政策を早く進めていくこと(が肝要)だ。野党においても、社会保険を下げるべきなど、本会が言い続けていることと符合する主張をしており、早くそのようなことをやるべきだと思う。(関税交渉は)たまたま現状に至った。今とは異なる展開もあったかもしれない。米国の高官と話していると、日本への関税に対して楽観的な意見を言われていた。日米関係を踏まえればそのような見方があったのだろう。このような状況になっているのは、他国に対しても示しているトランプ大統領の自動車(の関税)に対する(スタンス)によるものだと思う。背後には、MAGAMake America Great Again)の存在があるため、(彼らにとって)良いメッセージを発信しないといけないということなのだろう。最終的に、(自動車関税が)10%を切るというのは非常に厳しいが、現状の(交渉内容)のままとは考えづらい。何かしら、お互いに歩み寄るのだろう。ただ、どのよう(な結論)になるかはわからない。少し時間を要するかもしれない。

Q:日本製鉄が(USスチール買収の交渉を)うまく進められたのは、相手にもメリットがあると説得できた(からだと思う)。関税交渉らについても、同じような考え方を当てはめて進めていけばよい等、アドバイスがあれば伺いたい。

新 浪:そのような交渉は、おそらく相当実施している。例えば、造船業やアラスカの天然ガスについても、そのような(米国のメリットの)議論を必ずしていると思う。しかし、米国には「それらは関税交渉に関わらず、日本は行うだろう」と言われてしまう。それがリアリティかもしれない。造船にしても、具体的な提案をしていかないと納得されないのかもしれない。トランプ大統領は、交渉結果を見せた時、国民に「おぉ!」と感嘆させたい。(日本との交渉は、)それに当てはまるものに至っていないのだろう。私たち日本人の感覚には、そのようなショーの感覚を持っていない。トランプ大統領は、ショーを大切にして国民に訴えていきたい。米国大統領はそのような面がある。(日本との交渉内容は)まだ琴線に触れる内容になっていないということだろう。一方で、トランプ大統領の頭にあるのは、中東の問題をどうするのかということだ。私は、むしろ日本の方がもっと(深刻に考えなければならないと思う)。今後、(イランの)フォルドウという地下90メートル程度にある核関連施設を、米国が参画してバンカーバスター(地中貫通爆弾)で破壊するのか。現状イランは、GCC(湾岸協力会議)国として湾岸に迷惑をかけないという方向だが、いざとなれば大変なことになるだろう。第一段階は核施設(破壊)、第二段階は要人の抹殺、第三段階は政府の転覆。現在、第三段階まで進展しており、イスラエルは本気で臨んでいる。それを米国が本当に止められるのか。止められない場合、日本のエネルギー政策はどうなるのか。このことが非常に重要ではないかと思う。だから、やはり原発をどうするのか、国民に訴えていかなければいけない。化石燃料が中東から輸入できなくなったら、今の(エネルギー)価格では済まない。緊急的に別の国から輸入しないとならない。ロシア(など他の地域)からも調達する必要があるかもしれない。このようなエネルギー政策を緊急にどう対処するのかを考えないといけない。地球温暖化も非常に重要だが、今のコンティンジェンシープランを至急作っておかないといけない。おそらく資源エネルギー庁などはそのようなことを対応していると思うが、国民としても(エネルギー源の)ツールとして、原子力規制委員会が安全であるとした原発については、地元から理解を得られる方法論を考えていかなければいけない。具体的に言えば、(東京電力HDの)柏崎刈羽原子力発電所については、地元新潟県の方々にご理解を頂ける方法を考えなければいけない。

Q:自動車関税に関する協議が難航しており、企業は少なくとも10%の関税が課される世界を予想しながら今後の事業運営を行っていかなければならない。そのような中で、企業としては関税がある世界で今後どのように対応していくべきか、また、自動車産業は日本の屋台骨とも言われていることから、政府としてどのように対応していくべきかについて、伺いたい。

新 浪:だからと言って、補助金を出して(企業を)支援するというのは、デフレ時代の発想であり、このインフレ局面においては、自動車産業が苦境に陥った場合の対応も、(異なる)それなりの考え方が求められると思う。新しい産業としては、例えばAI活用のためのデータセンターなどが次々と登場している。すぐにではないにせよ、こうした新分野にも早急に着手していかなければならない。私は安倍政権時代に(産業)競争力会議のメンバーに入っており、その後経済財政諮問会議にも参加してきたが、(これまでの日本経済は)「一本足打法」である。この一本足打法から脱却すべきだと繰り返し提言してきたが、(残念ながら)実現には至らなかった。産業政策の是非については様々な議論があるものの、そうした議論を繰り返すよりも、速やかに新産業政策を実行に移し、この一本足依存から脱却しなければならない。現実に、中国のEVは非常に安価で、世界を席巻しており、トヨタは一定の対抗力を持っていると思うが、他の自動車メーカーにとっては大変厳しい(競争環境に置かれている)。こうした中で、いかにして(産業構造の)トランジション(移行)を進めるかが問われている。仮に世界が本格的にEVに移行すれば、パーツメーカーは大変厳しくなる。もっとも、彼らが持つ技術を生かせば他分野での展開も可能性がある。ゆえに、自動車産業を恒常的に支援し続けるのではなく、むしろパーツメーカーを含めた企業が保有するノウハウを活かして、いかに新たな産業分野へ移行していくかを後押ししていくことが重要である。(この議論はすでに)10年以上前から指摘されてきたことである。新たな(成長)分野としては、例えば日本においてはヘルスケアやバイオ、健康長寿(産業)などが挙げられる。医師会とも協力し、従来あまり手がつけられてこなかった予防医療分野などにおいて、まだ多くの成長余地が残されている(ため)、ここを積極的に開拓し、新たな産業を興し、民間が投資しやすい環境を整備すべきである。さらに、海外からの資金流入も期待できる環境にある。仮に一時的に失業者が生じる場合には、その個人に対しては支援を行うべきであると思う。従って、企業に対してではなく、やはり人に対して支援をしていくことを行うべきだ。企業への恒常的支援が日本経済の(持続的な)発展につながるとは必ずしも言えず、人材に対してリトレーニングなどを実施し、人には適切にサポートしていく仕組みを徹底すべきである。必要とされなくなった分野の労働者を新たな分野へと移行させる仕組みを構築することが重要である。現に(日本では)人手不足が深刻であり、単純なマクロ計算ではなく、スキルのギャップを埋める支援こそが今必要とされていると思う。人材の流動化は20代、30代、40代のみならず、現在では50代、60代においても始まっている。これを一層加速させること(が政策の大きな課題)である。年齢を問わず、こうした(人材)移動が活発化してきた今こそ、政策としても動き出した人々をしっかりと支援する好機である。こういうことを行っていくべきで、「人」が大切だ。

Q:インバウンドに関して伺いたい。訪日外国人に対する免税制度見直しの中で、消費税を払うべきという議論が、与野党問わず始まった。訪日外国人には消費税を払わなくてよいことが根付いている一方、制度的疲労や国内が物価高で苦しんでいる中で、外国人だけ(消費税免税)ということを見直すことについて、見解を伺いたい。

新 浪:原則は、(日本人も外国人も)同じ(ように徴収)にすることで良いと思う。場合によっては考えていかなければならないものもあるかもしれないが、制度そのものを複雑にしないためにも、徴収するということでよいと考える。オーバーツーリズム等と言われているが、ある一定の調整弁になるかもしれない。ただ、徴収したものは、インバウンドやサービス産業の発展に使うことが私は良いと思う。訪日外国人の訪問先は一定の地域に限られている面もあることから、もっと広く訪問していただけるようなことにサポートを出すとか、一定の目的を設けた方が良い。大阪・関西万博に来た方が、もっと様々なところへ足を運ぶ。最も訪問者の多い東京から東北地方にも行っていただく。それをどのようにしていくかというための財源にする。ただ徴収するだけではなく、訪日外国人の方々にもプラスになるという方がベターではないか。(大都市部から)足を運んだ先でライドシェアが普及していないため大変困られているなど、耳にする。そのようなところへ訪問しやすい環境を作るにはどうしたらいいか、地域の自治体をサポートするとか、工夫をして利便性向上に使う。(つまり、)使途の問題である。基本的には徴収して良いと思う。

Q:自民党の参院選公約の2万円の給付金について、先ほどより(発言のある)ワイズスペンディングやEBPMという観点からすると、給付金は過去にも効果がないとは言われており、何より世論調査で過半数の国民が反対だとまで言っているが、まず自民党の公約についてどうお考えか。

新 浪:公約を読んでみると、(給付金を)必要とされる人たちへということ(が書かれているが)、それをどこに線を引くのか。いわゆる英語で言うと「subject to」だが、必要とされるという方々(対象となる方の範囲)をどこまでとするのかが分からない。必要とされる方はおられるのだろうとは思う。ワイズスペンディング上、本当に必要とされる方であればそれはよいが、ただ大きな流れとして、バラマキ(政策)というものはもう有効ではない。よって、もっと違う政策が必要なのだろうと思う。た正直、ある確定申告をされるような方々(への給付金)が必要かというと、そうではないと思う。むしろ経済の発展をさせる方が重要だ。そういうことに腐心すべきだ。やはり自民党へお願いしたいのは、既得権益のところ(の打破)をしっかりチャレンジしてもらいたい。それによって投資ができれば、経済が浮上してくる(だろう)。やはりどういう理由でこういうこと(2万円給付の発案)をされたのか分からないが、(この給付金に対する)国民からの反応は良くなくなっているというのは、国民(の理解や視座)が大変いい方向にあるなと思う。よって、これをしっかりと自民党も理解していくべきで、他党も理解していくべきだ。バラマキ合戦のないように是非していただきたいと思う。

Q:(給付金は)一律にばらまくようだ。住民税を払っていない世帯はさらに上積みだ。したがって新浪代表幹事にも2万円払われる。

新 浪:それは駄目だ。本当に必要なところに(給付金が)いくのであれば(よいが)、本当に必要なところとは何(どこ)なのか。私は必要ではない。だからそれ(バラマキ)をやっている限りは、やはり理解されないと思う。ましてや今非常に色々な形で財政の難しさというのは、長期金利も上がってきており、こういう(不透明な)状況になっている。私はただのバラマキ(政策)では駄目だと思う。

Q:(2万円の給付金ではなく)即効性のある物価高対策として、何を講じればいいのかについて伺いたい。

新 浪:米(価)が、結果的にどうなるかが(不確定)ということもあるが、(小泉進次郎 農林水産大臣のような)リーダーシップは極めて重要だと思う。やはり、賃金については実質賃金(の水準)がマイナスであり、(このような状況で)考えるべきは、手取りを増やすために社会保険料を下げる必要である。例えば、(将来を見据えて)5年以内に後期高齢者負担金を撤廃することや、湿布薬のようなものは一切やめるなど、100項目以上(のことについて)経済・財政一体改革推進委員会で議論されていることを実行に移すことである。国民目線に立ち、既得権益に対し、真面目に考えてもらいたい。(実行に移さない限り給付金を)支給しても、(効果が薄いということを国民が)広くわかるようになってきたことは素晴らしい。社会保障でも(財政の)無駄があり、地域によっては民間病院では(実態として)急性期(病床)でないのにかかわらず、急性期(病床)扱いをして非常に高い(診療報酬)点数をもらっている(実態がある)。特に地方の病院ではこうした実態が散見される。(適切な医療を効率的に供給できる)地域医療構想はほとんど進展していない。(制度改革を)やると決めたらやり遂げる(責任がある)。コメに関しても、(過去に)農業改革が実施されたにもかかわらず、なぜこうなったかということもある(米価が上昇する事態が生じている)。(改革を)やり遂げる姿勢をもって実行に移すことを政府与党にお願いしたい。国民が(バラマキの効果の低さを)理解し始めたのは、前政権の時から(のことで)、すでにその兆候が見られていた。そうしようということを国民は理解すると思う。先々の問題も(見据えて)解決することによって(国民がその姿勢を理解する)、例えば基礎年金(の財源について)もどこから(確保されるのか)、いわゆる国の税収は(どうするのか)、場合によっては税金がかかったら応能負担で(財源を確保する)。もしくは我々のように(給付金が)いらないところは給付を受けないといった、何か(支給の要件などを)話をしてもいいのではないかと思う。(政府も給付を受けないと)言われたら、わかったと言うだろう。(給付金の支給が不要であると)財界が揃って、これ(給付金を)もらうのをやめようというのもありかもしれない(検討に値する)。ただそれだけ(給付金の支給を辞退すること)がどういう動きになるかは、全体としては分からないが、何かしら大きなうねりを作るようなことが必要ではないだろうか。昭和や平成に作ってきた制度はもう限界に達している。(制度が限界に達していることを)国民は理解しているからこそ、(年金制度や医療制度などに)メスを入れることが重要である。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)

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