代表幹事の発言

新浪剛史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

公益社団法人 経済同友会
代表幹事 新浪 剛史

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冒頭、3月に訪問した代表幹事インドミッションの所感を述べた後、記者の質問に答える形で、トランプ大統領の関税政策による保護主義的傾向の強まりへの見解や、日本との個別交渉の見通し、設備投資控えについての懸念のほか、フジテレビ第三者委員会調査報告書、中国の台湾周辺軍事演習への受け止め等について発言があった。

新 浪:3月26日から28日の3日間、代表幹事ミッションとしてインドのムンバイ、ニューデリーを訪問した。ムンバイでは、リライアンスのオフィスでムケシュ・アンバニ 会長と1時間にわたり意見交換を行い、タタ・コンサルタンシー・サービシズとも意見交換をした。地元の両最大財閥とインドでのビジネス展開はどうあるべきかという議論を行った。ニューデリーでは、約1時間にわたってモディ首相と直接議論する場を設けることができた。モディ首相の話から感じたのは、マルチスズキが進出した際、初めて海外、特に日本から車を作るということで相当追々の日本(企業進出)の審判になった(ということである)。やはりあのような大きなビジネス(自動車産業)があり、そしてまたその後に安倍 元首相との交遊があった(ことも関係しているだろう)。日本のモノづくりに対して「メイク・イン・インディア」というようにぜひ日本にモノづくりに来てもらいたいというラブコールが相当あり、いくつかの具体的な投資事例などをお話いただいた。着席後、予想以上に長い時間(の面談の機会)をいただいたが、我々もこんなに議論できることは素晴らしいことだと思った。それだけ日本へ対するラブコール(投資期待の表れ)なのだろうと思った。また、バイシュナウ IT鉄道大臣、シタラマン 財務大臣、ゴヤル 商工大臣とも面談し、そして何度も(過去に)お会いしているジャイシャンカル 外務大臣(にも昼食会に招待いただいた)。今後何と言ってもQuad(日米豪印戦略対話)という位置づけにおいて、日本としてグローバルサウスのリーダー格であるインドとの関係を作っていくことは大変重要だ。人口14億人とこれだけ増加し、人口ボーナスが2050年まで(続く見通しで)中間層がどんどん拡大しているインド(は)、正直ビジネスをやっていく難しさもあるが、日本のプレゼンスをビジネスや投資、そしてモノづくりを通じて高めていくことが大変重要だ。現在日本企業は(インド進出企業)数があまり増えてないという状況を鑑み、今後もっともっとインドに行き、インドで投資していく必要性がある。マルチスズキが40年以上前からこれ(インドへの投資)をやっているのはご案内の通りだが、大変成功していて(インド市場の)40%以上のシェアを持っている。このような第2のマルチスズキのような企業がどんどん出てくるように(なるとよい)。またインドはこれからの成長が見込まれるアフリカや今非常に投資意欲を持っている中近東に繋がっていくハブになる。その意味で、インドをいかに我々が投資対象としてうまくやれる(投資できる)か(が重要だ)。これは日本経済にとっても大変プラスになり、また先ほど申し上げた「開かれたインド太平洋」構想の中で大変難しい地政学(情勢)において一緒になってやれる相手ではないか。実はまた来週もインドを訪問予定であり、サントリーもこれから注力する(方針である)。インドを最も重要な国の1つと考え日本企業がどんどん投資をして、相手(インド)もそれを受ける。そして電気もインフラもどんどん整っていく。(これには)早く参入する方が勝ちだと思う。難しさはあるもののそれを行ったメンバー全員で感じてきたというのが今回の代表幹事インドミッションだった。

Q:トランプ政権が相互関税を正式に発表する予定となり、既に主要国が、報復関税や貿易規制といった措置で対抗する動きを見せている。世界で保護主義的な傾向が強まっていることについて、改めてご見解をお伺いしたい。

新 浪:トランプショックというものはある程度予想していたが、実際に今日から発表された。今後、トランプ大統領はバイ、つまり多国間での交渉を行うのではなく、それぞれの国と(個別に)関税について交渉していくことになるだろう。日本は関税が高いわけではなく、むしろ低い方であり、また米国に対する海外投資については5年連続で世界一(の実績)である。そのため、今後(こういった背景をカードに)交渉していくことになるだろう。現状のままであることはないと(考えられる)。さらに、他の国々も、(例えば先ほど)ミッションの所感を申し上げたインドも(含め)、各国がそれぞれ交渉を進めていく中で、今後はバイラテラル(双方向)の交渉が増えていくことになるだろう。(関税が)上がるというよりは、各国が交渉を通じてお互いに(関税を)引き下げていく方向に進むと予想される。この結果、各国ごとに異なる交渉結果が見えてくるだろう。その過程で一時的な混乱が起こるかもしれず、最終的には中国とどうなるか、そこについてはまだ不確定な要素が多い。しかし、各国が交渉を進める中で、徐々に落ち着いてくるだろうと(考えている)。おそらく、半年程度で状況は安定してくるのではないか。

Q:フジ・メディア・ホールディングスとフジテレビが設けた第三者委員会からの報告において、業務の延長上において起きた性暴力、人権侵害という重い認定をした。企業統治の観点からどのように受け止めるべきか、所見を伺いたい。

新 浪: 第三者委員会の報告に関しては、サマリー(要約版)を読んだ。有識者の方々が関係者へのヒアリング等、短期間でできる限りの調査をされたと認識している。記載内容は非常に明確で、第三者委員会の報告書のモデルになるくらい、赤裸々に(企業)文化そして人権・コンプライアンスに関する課題があることが明確にされていた。包み隠さず報告されたと認識している。そのような中で、フジ・メディア・ホールディングスとフジテレビから公表された「人権・コンプライアンスに関する対応の強化策について」と題する一連の取り組み状況および再発防止策は、今後のロードマップも示されており、その点も評価されるべきことであると感じている。また、経営陣の刷新案も発表されており、「基本的人権を絶対に守る」と宣言された清水賢治 フジテレビ社長の決意も明確であると思う。今後、刷新された経営陣でフジテレビの文化を変えていきたいという意思、不退転の覚悟の決意として表れていると感じる。次の段階としては、CMの再開を今後検討していく段階に来ているのではないか。報告書を見る限り、(会社を)変えたい、変えるという覚悟をした(表れである)と思うが、その実態が出てこなくてはいけない。今後、どのように(刷新を)していくかということが大切であるが、それとともにCMの再開を検討する状況になってきたのではないかと思う。サントリーホールディングスにおいてもそのような認識のもと、CMの再開について今後検討していく。ただしあくまでも、検討段階である。重要なことは、再発防止そして(企業)文化を変えていくというアクションがしっかりと確認されていくことであると認識している。

Q:米国の相互関税政策について、各国が米国との交渉の結果、異なる対応が実施されるという話だったが、日本との二国間交渉はどのような局面になると想定しているか。

新 浪: 日本は自動車部品を中心とした中小企業の影響が非常に大きいため、米国と関税交渉を綿密に行う必要があり、各品目で既に交渉が進められていると考えている。日本についてある程度楽観的な見方をしていたが、米国が全世界を対象に相互関税を導入することを踏まえると、二国間交渉は常に厳しいものになるだろう。しかし、日本は対米投資に注力しているため、現状よりも(関税が)引き下げられる方向に進むと考えている。日本側も自国の状況を踏まえて経済産業省を中心に外務省と連携しながら、米国に対して対応している。一方で、米国側のスタッフ不足などホワイトハウスの体制が不十分だと考えられ、さらに日本は(米国の貿易赤字相手国としては)7番目であり、米国にとって重要性が低い(と認識されている)。そのため、日本政府は迅速な対応を望んでいるものの、米国の対応が遅い可能性がある。日本政府が横着している訳ではなく、米国にも体制上の課題があるのではないかと思う。

Q:フジテレビの件について、再発防止策を確認した上でCM再開を検討すると発言していたが、直ちに検討を始めるのか、または更なる強化策の発表を待って検討を進めるのか。

新 浪:再度、再発防止策を発表いただきたいという趣旨ではない。具体策が本当に良いものであれば、CM再開についてフジテレビと議論を開始しても差し支えないと考えている。つまり、再発防止策を徹底していただきたい、ということだ。その決意が清水賢治 社長には表れている。再発防止策の内容を改めて確認し、その上でCM再開という次のステップに進むかどうかを検討し始める段階にある。第三者委員会の報告書は、会社を大きく変革する覚悟を持った内容だったと思っている。また、包み隠さずに真摯に対応した第三者委員会の姿勢や対応策は、今後別の事態が発生した際に1つのモデルとして非常に参考となると感じている。

Q:トランプ政権の関税政策に関して、今後、各国との交渉が行われるとの見通しをお話されたが、多国間のグローバルな自由貿易という機運が後退し、保護主義に基づくブロック経済的な姿勢が広がるとの懸念もある。新浪代表幹事の受け止めを伺いたい。

新 浪: (トランプ政権の関税政策は)2つの観点で考える必要がある。トランプ大統領は1対1の交渉を重視しているが、ブロック経済化(を進めているの)ではなく、貿易をすること自体に対して反対はしていない。不平等であると認識している国々、関税を高く設定して米国製品を受け入れない国々に対して、関税を適正な水準に引き下げるようにという交渉である。ブロック(経済)化という思いで(関税政策を)行っているわけでなはなく、フェアな貿易を行おうという考えであり、これは1つの考え方としては理解できる。もう1つの観点は、ウクライナ戦争を行っているロシアやその他の国々に対して、制裁を課すための関税という別の論点である。ロシアが輸出している石油などの鉱物資源をはじめとする製品を輸入する国々に対して、より高い関税を課すという別次元(の狙い)がある。日本も(ロシアから)天然ガスを輸入しているため、(自動車への関税などとは)別の課題があるが、(トランプ大統領は)ウクライナ戦争を停戦に導くために強いメッセージを打ち出している。後者はロシア製品に関するものであるため、世界経済全体に対してそれほど大きな影響にはならないと思うし、前者はブロック(経済)化を意識したものではないと考えている。ただし、日本は自由貿易を是としているため、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)やRCEP(地域的な包括的経済連携協定)、Quad(日米豪印戦略対話)など、自由貿易を推進してきたい国々とはしっかりと取り組みを進めていく必要がある。これらは、参加したい国々に対してオープンな枠組みであるため、ブロック経済化ではないと認識しており、(日本が)ブロック経済化の方向に進むことはないだろう。ただし、(トランプ政権は)米国自身だけで運営できる経済を目指したいと思っているかもしれない。とはいえ、世界(経済)はサプライチェーンでつながっており、リチウムイオン電池ひとつを取り上げても一国内で製造することはできないため、米国の考えに関わらず、世界経済が徹底したブロック化の方向に進むということは考えにくい。サプライチェーンに影響が生じることは間違いないが、ブロック経済化の方向ではないだろう。ただし、ロシア、中国、イラン、北朝鮮という枢軸を経済ブロックと考えると、1つの経済ブロックになっているとも言える。とはいえ、中国だけは今後どうなるかがわからない。米国が中国に対してどのような圧力をかけるのか、様々な要素が考えられるため、対中国に関しては見通せない状況にあるのが現状だ。(トランプ政権と)中国との対話がいつ行われるかは、今後の世界経済に影響する大変重要な要素だと考えている。

Q:トランプ政権の関税政策に関して、日本国内の中小企業が影響を受けるとの指摘があった。大手企業も先行きの不透明感から設備投資を控えるとの報道もあるが、新浪代表幹事の現状認識と影響がどの程度の期間続くと見ているかを伺いたい。

新 浪: 中小企業・大企業ともに設備投資が弱くなっており、世界経済の大きな流れに対して弱含みになっていると見ている。日銀短観の結果を見ても少し弱含みであり、強気になる材料もない中、今回(米国による)追加関税が実施されたことで、なおさら弱気になるだろうと考えている。日本国内も政治情勢が不透明であまり良い材料がなく、投資できる環境にあるものの人手不足の影響が深刻だ。(米国の追加)関税以上に人手不足が設備投資や建設、機械製造といったところに影響を及ぼしている可能性がある。(米国の追加関税については)自動車部品などを扱う中小企業が影響を受けるが、日本経済を大きく揺るがす水準ではないと考えている。とはいえ、成長率には影響するため、この下押しが半年ぐらい続くのではないか。(日米の二国間交渉の)時間軸と同時に、米国側にとっては早く解決しようという意欲がわかない可能性はある。(日本は米国の)貿易赤字額で第7位であり、あまり大きな国ではないため、(貿易赤字額が)大きな国から(米国は交渉を)進めていくのではないか。反面、(貿易赤字額が)少ないため、(二国間交渉が)早期に解決する可能性もあるとも思う。米国にとって(日本は貿易赤字の解消の)優先順位がそれほど高い国ではないため、日本は(追加関税の)対象にはならないのではないかと少し楽観的に考えていた。今後、半年ぐらいの時間軸の中で、様々な事柄が明確になってくるのではないかと考えている。

Q:フジテレビの件について、今後(CM再開の)検討に値するという話があった。次のステップとしては、(CMの)再開に向けた機関決定になると思料するが、(その前に)実務者による報告書の検証や(CM再開に向けた)判断には、ある程度の時間を要するのではないか。やはり、この点は時間をかけてから、機関決定を行うというイメージか。

新 浪: 今回の(報告書の)内容をもう少し精査して(いく必要があり)、これでいいや(とすぐに決定する)というようにはなかなか簡単にはいかない。これまで、(CM再開の)検討できていなかった(状態であった)が、検討できる段階になってきたと認識している。これまで、フジテレビとどれだけの覚悟なのかといった話もしていないため、直接的に我々自身がその覚悟を確認していくこと(が肝要)だと思う。検討の俎上にも上げられなかったところから、俎上に上げられる(ようになった)。その上で、本当に(CMを再開して)大丈夫かということを担当部局も確認した上で、具体的(なCM再開に向けた動き)に入っていくということである。(CM再開に向けた)ワンステップ前の段階だと認識していただきたい。

Q:世の中の空気も見ていなければならないだろうから、やはり時間を要するということか。

新 浪: 過去の大きな課題に鑑みても、これだけ腹をくくった(報告書)という事例はそうないだろう。私は、それくらい覚悟をされている(と感じている)。経営陣や社外取締役等(の刷新)も(含めて)すごい覚悟であり、会社を挙げて「変えるのだ」というメッセージが出ていると思う。あとは、(報告書等の)中身をもう少し精査する状況なのだと思う。よって、(CMの)再開に向けた準備をそろそろ行っても良いのではないかと認識している。

Q:(CM再開の決定に際して)株主総会も、1つのポイントとなると考えるか。

新 浪: 株主総会よりも、やはり経営陣の刷新および経営陣の考え、具体的な再発防止策、そのようなことについて、しっかり詳細を先方と確認することが必要なのではないか。(CM再開を)するかしないかではなく、(刷新内容等が)大丈夫と認識すれば、CM再開に向けて具体的に検討していく。そのような状況であると思う。大丈夫であるかは、現場(の担当)が判断していくものである。経営陣としては基本的なすべきことをしていると(判断しても)、現場がそう判断しなければ、話が変わってくる。経営と現場が一致した意見になって、初めて具体的に(CM再開に向けた)方向で行こうということになると思う。大きく会社を刷新する(方針)は、清水賢治 社長が決意を表明され、具体案も出しているため、あとは(実行を)我々自身が確認できるかということである。実行できるのかを我々自身が認識しない限り、ゴーサインを出せない。最もお客様と接している現場が、この会社なら(CM再開を)しても良いと思えるかどうかである。経営レベルとしては、(CM再開の)検討についてゴーサイン(を出せる状態にある)が、すぐに再開するという話ではない。担当部局や現場が、大丈夫であるという(判断があって)再開する話になるということだと思う。経営レベルとしては、非常に刷新をして徹底的に取り組んでいく覚悟や、第三者委員会からの具体的かつ赤裸々にオープンにされた指摘を通じて、次のフジテレビになることを明確にされたものと認識している。ただ、繰り返しになるが、お客様と接する現場が、大丈夫(と判断する)か。これを確認する必要がある。やはり、現場が大変重要であると感じている。

Q:トランプ関税について、これから半年ぐらい二国間交渉が続いていくだろうというお見立てだが、そもそも日本政府や日本経済がその交渉において切れる(有効な)カードを持っているのかというのが1点目、あとは逆に今回の大きな構造的な転換を含む話し合いを行うにあたり、日本政府や日本経済がこれを機に何か変えるべき点がもしあれば、お考えをお聞かせいただきたい。

新 浪: どちらかというと貿易よりも投資の問題である。日本は非常に強力な投資のカードを持っており、トランプ大統領もその点については十分に理解していると考えられる。再三、亡くなられた安倍元首相も、日本がどれだけ多くの投資を行い、雇用を生み出しているかを強調してきた。また、武藤容治 経済産業大臣も先日、(対米)投資について同様の主張をしており、その重要性は何度も述べられている。ただ、先方がまだアジア政策や日本政策の準備が整っていない現状がある。このような状況の中で、私は日本が持っているカードは「投資」というカードであると考えている。とりわけモノづくりは日本が得意とする分野であり、米国向けの投資やデータセンターなどの話も進めているため、そういった意味で日本は大きなカードを保持していると考えている。一方で、(2点目として)日本政府が変えるべき点については、私は「変えるべき」ではなく、むしろ圧力を受けていると捉えているのは、防衛に関する要求である。ヘグセス米国防長官が来日し、伝えられたメッセージは、やはり(防衛費)2%を確実に実施してほしいということだ。コルビー氏が上院で本当に承認されるかどうかは不確かだが、もし承認されれば、3%の可能性もある(と言われている)。実際、セキュリティや防衛に関する問題は、別の軸として(扱われるべきであり)、トランプ大統領からは、これについてしっかり対応してほしいと(いう強いメッセージが)、ヘグセス米国防長官を通じて伝えられていると考えられる。

Q:先ほど地政学のところで、ロシア、イラン、北朝鮮と中国というのはまた別の部分で考える必要があるだろうと(いうお話があった)。昨日から台湾への軍事演習が始まり、中国との向き合い方、民間・外交・貿易あらゆる面で密接な関係にあると思うが、今回の事態はどのように受け止めておられるだろうか。また、今後の日米間の交渉でも何かメッセージがあればお願いしたい。

新 浪: まず、ヘグセス米国防長官が来日し、日本と共に東アジアの安定を図るという方針は、石破茂 首相がトランプ大統領と会談した際にも確認された内容である。日米(関係)が揺らぐ可能性が懸念された中で、(最終的には)そのようなことはなく、関係は確認されている。しかし、台湾については、台湾そのものが自国を守るために武器を購入し、米国との関係を強化しているが、少しちぐはぐなところがある。頼政権は米国と歩調を合わせているが、(台湾の)国会は国民党が握っており、そのため対応が一致していない。これがトランプ大統領を苛立たせている(要因の1つである)。この辺りを中国がついてきて、最近、台湾を巡る状況が非常に活発化している。中国は片方で貿易や投資を推進し、相互の環境を良好に保とうとしながら、防衛やセキュリティに関してはまったく異なる態度を取っており、この矛盾したアプローチが中国の特徴である。日本は中国としっかりつながりながらも、常に米国の関係を強化し、いわゆる「デバランス」の力を強化していく必要がある。防衛費2%や3%という数字も重要だが、その中身がより重要であり、特に中国が台湾に対して攻撃的な行動を強めている現状において、米国と共にそのような行動がもたらす危険を(明確に伝えることが重要である)。トランプ大統領の下で、日米関係に亀裂が生じる可能性もあるが、これはバイデン政権とは異なる状況であると言える。(中国は)常にちょっかいを出してくるが、それにどう対応するかをみている。だからといって、中国と完全に距離を置くべきだという話ではなく、対話を続けることが重要である。これからは適切な対応をしつつ、互いに切っても切れない関係を作り、戦争を回避するための努力を続けることが求められる。したがって、完全に良いことではないが、予想できる動きが進んでいると感じている。

以 上
(文責: 経済同友会 事務局)

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