代表幹事の発言

新浪剛史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

公益社団法人 経済同友会
代表幹事 新浪 剛史

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冒頭、本日の総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会に出席し、提出した意見書『第7次エネルギー基本計画に向けた意見~2050年に向けたわが国のエネルギーシステムの最適化のために~』について述べた後、記者の質問に答える形で、日銀の利上げ決定と株価への影響、円安・輸入物価の状況、最低賃金、敦賀原発2号機再稼働申請の不許可、年収の壁問題、円相場・株安、食品産業を中心にした値上げ、小林製薬のガバナンスなどについて発言があった。

新 浪:本日開催された、総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会にて、本会のエネルギー委員会の兵頭誠之 委員長ならびに見學信一郎 委員長より、第7次エネルギー基本計画に向けた意見(経済同友会 エネルギー委員会『第7次エネルギー基本計画に向けた意見~2050年に向けたわが国のエネルギーシステムの最適化のために~』2024年8月2日)を説明いただいている。第7次エネルギー基本計画が年末までに公表されると聞いているが、(基本計画を策定する上で、)ぜひ検討いただきたいポイントを提案している。『活・原子力』は、安全や安心を確保し、しっかりと(原発を)稼働させていくこと、また再エネの開発推進によりカーボンニュートラルを目指す(という考えである)。補足となるが、第6次エネルギー基本計画が行き詰まっている現状を踏まえて、第7次エネルギー基本計画では(計画の内容を)リアリティのあるものにして、政策と共に取り組んでいただきたいという意思がある。低廉なエネルギーの確保は我が国のAIを始めとした生産性の元となる。DXをしっかりと利用することで生産性を向上させ、給料が上昇する。このような関係性があるため、(民間企業として)第7次エネルギー基本計画の中で掲げられた目標が確実に(達成)できるという予見性がなければ、継続的な賃上げは困難になる。現状、第6次エネルギー基本計画が失策したことにより、継続的な賃上げが大変難しい。DXの源泉であるエネルギー代が高騰すると、DXがコスト高になるため、日本で作るより海外で(作る方が安い)ということになり、国際競争力で負けてしまう。第6次エネルギー基本計画は様々な意味で、経済成長が見込めず、実現が難しいと予見されるようなモデルだった。国が民間企業に対して、カーボンニュートラルに向けた体制を実現するための骨格がエネルギーである。経済同友会としては、両委員長にぜひとも、第7次エネルギー基本計画を予見性のあるものにしてもらいたい(と考えている)。政府は産業の活発化や継続的な賃上げの実現、ひいては生産性の向上に結びつくようにしていただきたい。ぜひメディアの皆さまも、第7次エネルギー基本計画に強い関心を持って様々な発信をしていただきたい。

Q:本日公表したエネルギー委員会意見の「意見のポイント」の中に記載されている、CO2フリーエネルギー電源を立地する地域への経済インセンティブが興味深い。既に電源立地交付金はあるが、具体的にどのようなものを想定されているのか。

新 浪:様々な方法があると思うが、現在の交付金は(消費地が)負荷を感じていないところがある。例えば、(電力消費地と電力供給地との間で)電気料金を変える。もしくは、電力消費地から電力供給地への交付金を国ではなく都道府県の間で行う制度を定める。(電気を)使っているところが、作っているところに対して負担をする。このような感謝を込めた仕組みを作ることによって相互の関係強化をしていくことが必要だと思う。ぜひ検討していくべきだ。国経由の補助金ではなく、利便を得ているところが(与えてくれているところへ)何らかの形で(インセンティブを)提供するということが必要なのではないか。

Q:先月31日の金融政策決定会合で日銀が利上げを決定した。その結果、円高に推移し、本日も2,000円以上日経平均株価が下落している。日銀の利上げ決定、マーケットの影響について改めて代表幹事の受け止めを伺いたい。

新 浪:株主にとって、円安により株価が上昇した分が剥げたということがある。株価上昇の大きな要因として円安があったのは事実だが、今手じまいした方が良いと、リスク回避を考える株主や機関投資家がいるのは当然のことだと思う。マーケットの影響について、米国経済(の先行き)が大変厳しくなりそうだという話がある。自社でも米国の消費財を取り扱っており、(米国の)消費経済はそれほど強くないと思っていたが、データに出てきたことでサプライズになったのではないか。米国の景気は底堅いが厳しいという認識になり、米国のマーケットを牽引していたGAFAMをはじめテクノロジー関係への不安など、景気の先行きが怖くなってきた(のではないか)。日本と同様に(リスク回避を)考える人たちが出てくる。そのような調整局面がこれから続くのではないかと思っている。あくまでも一喜一憂せず、本質的に日本経済、企業業績は足腰がしっかりしているため、調整局面だというように(冷静に)見ていくべきである。

Q:新浪代表幹事は過度な円安が輸入物価の上昇を通じて賃上げ効果を減殺してしまう懸念をされていたと思うが、その観点からすると、現在の為替が円安から円高に戻った状況は好ましいと捉えてよいのか、お考えを伺いたい。

新 浪:調整と表現しているのは、消費者の皆さんがこれ以上物価が上がらないという安心感を持てるレベルかどうかであり、つまりそのレベルに達すると(安心感に)よって消費が進むようになり、日本のGDPの6割を占める消費が増えることで株価も上がり(景気が)底堅いという話になってくる。このように、安心して消費が進むかどうかが調整(局面)の一環だと考えている。よって、為替が148円~149円になったとしても、それだけでは円高というにはまだちょっと遠いと感じる。9月に米国のFEDが本当に(利下げを)行うと、金利差が縮小し、円安や輸入物価に少し安心感が持てるかもしれない。本来であれば4~6月の給与やボーナスが増え、消費が活発になるはずだった。消費に火がついて結果的に実質賃金が上がる、こういった画ができて初めて調整局面が終わるはずである。そうなれば、日本の経済が本質的に底堅いと評価され、(株式市場にも)もう一度買いが入る可能性がある。むしろそれでも消費に火がつかないのであれば、まだ物価がさらに上がる(との懸念が)払拭されず、調整(局面)が続くだろう。重要なのは、消費が戻るかどうかである。もう1つ重要なのは、企業の100兆円の投資が見込まれているが、その実現ができていないことだ。これは人手不足(が原因)であり、人手不足対策を真剣に取り組まないと、調整局面で持続的に強い足腰で日本経済がよくなっていくという担保が難しい。例えば今ゼネコンではあまり多く受注することを望まないと(聞く)。今までは資材や人件費の上昇で採算が悪化し、受注を控える傾向があったということだ。これにより、良い案件しかとりたくないというのは当然起こる(ことである)。今のような人手不足の状況で企業が掲げた100兆円の投資の受け手が少なくなってしまっている。掲げた(目標が)実現されていけば、当然のことながら実体経済とあった株価に変わっていく。実体経済にあった株価に変わるというのが目指すべきレベルだと(考える)。もともと株価と実体経済は一致していくべきであり、そのためには消費と企業の投資が重要である。この2つが(実現されれば)、おのずと(望ましい)調整(が進み)、株価と実体経済がマッチングしていくと思う。

Q:先日、今年の最低賃金の目安が決まり過去最大幅の引き上げ目安となったことへの受け止めと、以前から新浪代表幹事が掲げていた最低賃金2,000円達成についてどう考えているか。継続的な賃金引き上げが起きれば、政府目標の1,500円の早期達成、そして2,000円という目標も視野に入ってくるのかどうか、その点についてのご意見を伺いたい。

新 浪:政府の目標はご案内の通り、「骨太の方針」において私が(提案した)まず1,500円を早く達成することだが、その(先にある)2,000円までのロードマップを作ってほしい。それは予見性が(必要だから)だ。予見性があることで企業はDXに投資ができ、2,000円を目指すという予見性がなければ、特に中小企業は逡巡するだろう。しかし、2,000円が(現実になると)思えば、それに見合った人材の登用やトレーニングが進むはずである。そして、それに(対応)できない企業は新陳代謝されていくことになる。今のように人手不足の状況では、トレーニングを再度行う必要があり(それは政府が対応すべきことだが、)そうすることで、生産性の高い中小企業に人材が移動し、賃金も上がり、その企業がさらに良くなっていくという正のサイクルが生まれると思う。よって、5年なら5年という期間で(最低賃金目標を実現するという)意志がすごく重要であり、皆でそれを(実現)していくために、下請け構造を改善する話もできる。また、ITや経理・財務に精通した40代以上の人材が大企業から中小企業へ流れることも重要だ。このような人材の流動化によるダイナミズムを作ることによって、(市場)全体が活性化する。そのためにも最低賃金2,000円を早く実現することが重要だ。国際比較して日本の競争力を高めるためにも2,000円を(達成)できることが(必要で)、世界の競争力に追いつくためには目標を上げる必要がある。(日本は人口減少に直面しており、)毎年約50万人強減少している。外国から(の労働者を)呼び込むためにも最低賃金が高い国になっていかないと、エッセンシャルワーカーをはじめとする人材がいなくなってしまう。いろいろな方策があるが、そういった意味で早く(最低賃金2,000円)を実現するという意志をしっかり出すロードマップを(政府に)作ってもらいたい。仕組みを作れば、(下請けの)負荷を上で受け止めざるをえなくなる。最低賃金を1,000円程度で止めるのではなく、先に(もっと高い目標があれば)パートナーシップを強化していこうということになるので、制度とともにその実現のために(最低賃金2,000円の実現は)必要なことと考えている。

Q:最低賃金の全国加重平均50円引き上げが示され、今後の各都道府県の審議次第で、さらなる引き上げも考えられ、人手不足が深刻になっている外食や小売業界では、労働時間調整の動きが広がることも懸念されており、いわゆる「年収の壁」の解消が一層重要になると思われるが、新浪代表幹事の所見を伺いたい。

新 浪:(「年収の壁」の解消が重要という指摘は)その通りである。「年収の壁」(による労働時間の調整)は、恐らく11月よりも早く10月頃から顕著になると思う。絶対に超えることがないように計算し、(106万円・130万円に達する)前から控えるという行動をとられる。以前は12月頃だったが、今年は10月頃から(調整が)行われるだろう。最低賃金を引き上げても調整が行われる限りは人手不足が解消されることはない。働きたいのに働けない(という状況を解消する)ために、「年収の壁」問題に対して(支援強化パッケージによる)3年間の助成金が設けられたが、手続きが煩雑であるためにほとんど利用されていない。これは国の責任であり、利用されていないことを分かっていながら対処しないのは、本気で人手不足問題を解決しようと考えていないためではないか。このまま10月・11月になれば、サービス産業各社から(106万円・130万円の)壁を引き上げて欲しいという要望が強まる可能性もあると、これまでにも経済財政諮問会議の席で申し上げており、そうならないように今から(残る)2年半の(支援強化パッケージ)について使いづらさを速やかに解消すべきだと申し上げている。厚生労働省の方々も、実績として使われていない実態に気づいていると思う。現在の人手不足が民間企業にとって大変な深刻な苦境であることをご理解いただきたい。対処しないままであれば、(106万円・130万円の)壁を引き上げる(安易な対策)に多くの方々は賛成するだろうし、来年の選挙に向けて公約する政党も出てくるという重要な局面だという認識を持っていただきたい。第一に、足下の調整を行うための(支援強化パッケージによる)助成金のあり方を見直すべきである。(106万円・130万円の)壁を引き上げることになれば、(年金保険料を支払っている方々との)不公平という問題をどう調整し、誰が(年金財政が悪化する)責任を取るのか。サービス産業が多い日本では、これは大きな政治問題になると考えており、ソーシャルメディアも盛り上がると、止められなくなる可能性がある。既に意見を申し上げている通り、早期に(支援強化パッケージの助成金の見直しに)動いていただかなければならない。そして、早く年金問題の議論を始めなければならない。経済同友会として何度も申し上げているが、第三号被保険者に第二号被保険者に移行していただくために、どういう措置を取っていくのかについて政治がしっかりと議論しなければ大変なことになる。政府・与党には、この問題にしっかりと取り組んでいただきたい。昭和の時代に構築されたこれまでの仕組みを作り直す困難な取り組みであるため、早期に着手してもらいたい。少なくとも(支援強化パッケージで3年間)助成金を交付しようという方針になっており、その使い勝手が悪いことも明らかになっているため、速やかに直すように求めている。国の制度は使いづらくなりがちだが、使いやすくなるように(行政の)イノベーションを発揮してもらいたいと思っており、働きたい方が存分に働ける環境の整備をお願いしたい。

Q:円高株安の現状について、調整局面がしばらく続くとの考えを示されたが、終わりはいつ頃になるとお考えか。

新 浪:9月末頃までには終わるのではないか。4月から6月にかけて(の賃上げ)と賞与があったことから、本来であれば6月の消費は増加してもおかしくはなかった。(生活の中で)実質賃金がプラスに転じたかどうかを日々計算している人はいないため、賃金の先行きが消費者物価の上昇分にプラスアルファで伸びていくというノルムを9月・10月という(春闘よりも)早い時期から作っていくことが必要である。経済同友会や日本経済団体連合会の大企業を中心として、日本商工会議所に加盟する中小企業へと消費者物価の上昇プラスアルファがノルムであり、消費者物価指数が上昇しても自動的に(賃金が上昇して)安心できる状況が必要になってくる。6月に消費が思ったほど伸びなかったものの、9月になれば何とか改善するのではないかという期待を持っているが、そうなるように早期に賃上げの議論を再開する必要があるのではないか。(賃上げの議論は)執拗に繰り返さなければ、失われた30年の中で鬱積した状況へと慣性の法則によって戻ってしまう。(賃上げを)3年続ければ、消費者の間にも賃金上昇への安心感が広がり、インフレが進んでも大丈夫だと思ってもらえるようになるだろう。繰り返しになるが、9月には、方向感が見えてくるのではないか。加えて、他力本願は好ましくはないが、9月には、米国が政策金利を下げる可能性もある。もちろん株式市場は様々な要素が組み合わさっているため、どうなるかは分からないが、調整局面というのは、円安の効果によって日本経済の本当の実力ではない水準まで株価が上昇しているのであれば、調整が進んで(株価は)下がっていくものの、(賃金と物価の好循環が生まれて日本経済の)足腰が強いとなれば株価も上昇に転じ、実体経済も成長していく。これが望ましい姿であり、9月末までにそうなっていくとよいと期待している。

Q:日本原子力発電の敦賀原発2号機の再稼働申請が不許可となる可能性が非常に強まっており、本日、村松衛 日本原子力発電株式会社 社長への聴取が行われる。(同社は)再申請を希望しているスタンスだが、この件についての受け止めを伺いたい。

新 浪:断層(の活動性と連続性)が本当に否定できないのであれば、原子力規制委員会はルールに基づく。必要があれば、再度調査すればよいと思うが、本当に断層(の活動性と連続性)がある可能性を否定できないのであれば、安全が担保できないのでルールに則って厳しい(結果)となる。そのような意味でもきちんとしたファクトが必要である。明確にすることが科学的に難しいのか、私は詳しくわからないが、やはり原子力規制委員会の判断を是としていくことがルールなのだと思う。ルールをベースに考えていくことが基本であり、それが国民の原子力に対する信頼性が高まる(ことにも繋がる)ということだと思う。(妥当ではない・否定できないという結論よりも)なるべくクリア(な結論)にしていく努力をしていただけるとありがたい。

Q:実質賃金がなかなかプラスにならないとの発言について、春闘の結果を見ていても特に食品産業はすごく儲けているため、値上げをしすぎではないかという気がするが、どのようにお考えか。

新 浪:値上げをしすぎているかの部分は、食品産業は多重構造かつ元々小売業の圧力もあったりして、今まで中々値上げができなかった環境にあるのが第一点だ。それがある程度(値上げが)できるようになってきたのは、やはりデフレ経済からモデレートにインフレになっていく兆候であり、それが過度かどうかというところで過度が故に消費が進んでなければ問題だが、このインフレの大きなポイントである円安というところがある程度解消されていけば課題は解決(する)。あとは人件費だが、やはり一定の生産性も上げながら人件費分は頂戴することは正当だと思う。一方で、マクロ的に言えばそれ(値上げ分)が回っていわゆる賃金が上がっていく。賃金が恒常的に上がっていけば、そしてやはりある程度その(賃金上昇)分が物価に反映するという、この物価と賃金が好循環を作れる、そういう仕組み作りの始まりであるとご理解をいただければよいと思う。ただ、グリード(強欲)な値上げを行っている会社がどこにあるか理解してないため、ぜひどういうところにあるのかお示しいただけたらと思う。

Q:何度も何度も値上げしている部分や菓子業界でも値上げした上にステルス値上げというのか、内容量が小さくなるなど消費者に直結するような部分でかなり値上げを(感じる)。これは統計的な数字やエビデンスではないが、そのような印象を持っている。

新 浪:消費者の皆さんの印象がそのようなものである可能性はあると思う。なぜならデフレから急にこう(インフレに)なったからだ。デフレから急になったところ(要因)というのはサプライチェーンだ。ウクライナの戦争から(物価上昇が)始まり、その前は米中対立によって世界のサプライチェーンのコストが上がってきていた中で、円安が掛け算になってきた。これは消費者にとっては突然の驚きだ。欧米に比べたら元々デフレになっていたものがインフレになって、ガス代等の諸々の国の補助がなければ(CPIが)4%強になっていたものが今1.1%から1%ぐらいの補助があり、3%ぐらいになるのか2.8%になるのか。やはり突然であり(消費者の皆さんの)心理的には今おっしゃった(値上げを強く感じる)ところはあるだろうと思う。ただ企業にとって見てみると、やはりその分(コスト)が上がってきたため最初は恐々と(値上げを)やってきた。(自身も)その消費財(の業界)にいるが、大丈夫か大丈夫かと(実施してきた)。小売業も自分たちのアルバイトの方、社員の皆さんの給料も上げなければならない。その意味で、実はこれは(これまでの値上げが出来ない状況からの)ブレークスルーだと思っている。今まで(値上げを)絶対嫌だと言っていた小売業もやはりアルバイトの方には給料を上げなければならないと(考え実施している)。そういうこと(理由)で消費者の皆さんにご迷惑をかけながらも値上げをさせていただいている(状況である)と。決して喜んで(価格を)上げているわけではない。我々も相当なネゴ(調整、交渉)があっての結果であるため、ぜひご理解いただきたいと当事者の1人としてお願いを申し上げたい。


新 浪:私からもう1つ申し上げたい。小林製薬(「紅麹」問題)について質問を待っていたが、けしからん(と思う)。あれ(小林製薬「紅麹」問題)は社外取締役の責任だと思う。(理由は)2つあり、社外取締役の責任はあると思う。ここまでくる(重大な被害が出ている)と、細かくは分からないが、ガバナンスのレベルをもっと上げなければならない、いわゆる質を考える必要がある。ここまでくると流石にガバナンスで社外取締役の責任は大だと(思う)。消費者そしてこれだけ社会に迷惑をかけて、なぜ社外取締役があのような甘い体制を是としたのか。これは、経営陣のみならず社外取締役、取締役会そのものの問題であり、これを許す社会であってはいけないと思う。(社外取締役が)どのようなメンバーかあまりよく分からないで申し上げているが、日本は海外そして日本の機関投資家に対してガバナンスをこれだけ強化してきたのに、この産業にこれだけの迷惑をかけたということと、せっかくガバナンス強化をしようと言って(いたのに)世界に対して大変みっともないメッセージを出した結果だ。この2点で相当厳しい評価をされるべきだと思う。その意味で、社外取締役がどう考えたのか。そしてまた、(辞任した)社長がまだ取締役で残っていると聞き、びっくりしている。ガバナンスのない会社がこれだけの亡くなる方も出している中で、逆にこれをどう考えるか評価は明らかだと思う。そういったことをきちんと(メディアの)皆さんからも伝えていただきたい。私達経済同友会そして経済界はガバナンスをもっと強化し、本当に透明性のある、そしてステークホルダーに評価される会社を作っていきたい。そして、社会に評価され、(会社の)評価が上がっていく「共助資本主義」と私は申し上げているが、(本問題)は逆共助資本主義的なことをやっている。このような会社があってはいけない。是非とも二度とこういうことが起こらないように、ガバナンスという意味でも業界そのものでも、いわゆる報告義務に対してもっともっと強化すべきところを強化しなきゃいけないと感じている。質問がなかったため怒りと共に申し上げた。

Q:確認だが、今の(小林製薬の)社外取締役(についての発言)については経営責任を取って辞任するべきであるという趣旨と理解してよいか。

新 浪:(社外取締役は)経営者ではないため、いわゆる株主に対して会社は公のものであり、そしてまた上場している(ため)、社外取締役がこのような状況を見逃していることをどう考えるか、社会にきちんと説明責任があると(いう趣旨だ)。辞任せよとは言っていない。なぜ(辞任した)会長が200万円まだもらっているとか(辞任した社長が)取締役に残っているとか、なぜそういう意思決定をしたかは公に説明すべきだと思う。


以 上
(文責: 経済同友会 事務局)

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