代表幹事の発言
令和7年度税制改正の大綱について
公益社団法人 経済同友会
代表幹事 新浪 剛史
代表幹事 新浪 剛史
- 令和7年度税制改正の大綱が取りまとめられた。先の衆議院議員選挙で少数与党となったことを受け、自民党、公明党および国民民主党の三党が緊張感を持って議論を重ねたプロセスは評価に値する。合意に至らなかった論点については、令和7年度予算案と並行して関連法案を審議する中で議論を尽くしてもらいたい。
- わが国経済は長年にわたるデフレからインフレへと大きな転換期を迎えている。今後は、需給ギャップを政府財政で補う発想から脱し、民主導の経済成長を実現することが不可欠である。そのためには、「消費者物価指数以上に賃金が上がる」というノルムの定着と可処分所得の向上を実現する必要がある。
- 最大の焦点となったいわゆる「年収103万円の壁」については、物価の上昇や実質可処分所得の減少、就業調整などへの対応を目的に、2025年から基礎控除および給与所得控除を合わせて123万円に引き上げることが示された。政策趣旨は賛同できる一方、高所得者まで減税対象とすることは好ましくなく、また、可処分所得や労働供給力がどの程度増加するのか、財政健全化を踏まえた具体的な財源確保措置の在り方などの検討が十分とは言い難い。
- 可処分所得の向上に向けて、とりわけ大きな鍵となるのが雇用の約7割を占める中小企業の賃上げである。人手不足が深刻化する中、今回拡充・延長された中小企業向けの設備投資減税も活かしながら、企業自らが生産性の高い企業への変革を目指す機運がより高まることを期待する。
- 防衛力強化に係る財源確保のための税制措置については、法人税およびたばこ税は令和8年4月からの増税が示されたものの、所得税は結論が先送りされた。受益者である国民が遍く負担すべき性格の費用であり、今回の措置が妥当とは言えない。
- 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)については、企業がソーシャルセクターと連携し、社会課題解決に貢献する「共助資本主義」を後押しする重要な制度である。税額控除できる金額を寄附額の最大9割に拡大する特例措置が3年延長されたことは評価するものの、本社所在地への寄附を可能にするなど、包摂ある社会の実現に向けてより一層の制度拡充を求めたい。
以 上