キックオフイベント「未来選択につながる民主主義」
~若者の政治参画の促進と政治のデジタル化/分散型社会への選択肢と首都・東京の価値~
2020年9月11日に開催したキックオフイベントから「未来選択会議」は始動しました。
多彩なオピニオンリーダー、現役の学生も交えて、若者の政治参画や分散型社会への選択肢などについて議論しました。
(所属・役職は開催時)
開催日 | 2020年9月11日(対面・オンライン併用) |
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参加者 | 97人(登壇者15人、その他82人) |
視聴者 | 約80人 |
プログラム |
オープニング・セッション 特別セッション1 特別セッション2 総括・閉会挨拶 |
特別セッション1:「未来の選択につながる民主主義」~若者の政治参画の促進と政治のデジタル化
なぜ若者の政治参画が重要なのか。若者と政治の現在の関係はどのようなもので、どこに課題があるのか。次世代の声を政策決定過程に巻き込むには、どのような取り組みが必要か。広い領域のテーマでパネルディスカッションと意見交換が行われました。
パネリストの冒頭発言要旨
■ 東京大学大学院 法学政治学研究科 教授/経済同友会 アドバイザリー・グループメンバー 谷口 将紀氏
これからの日本は、高度成長期とは異なり、負担の分担が政治的な課題となる。将来、それを担う人たちの声を政治に反映することが一層重要になる。
■ 日本若者協議会 代表理事 室橋 祐貴氏
若者には、自分が政治に参画することで社会を変えられるという実感がない。自分の意見を言い、それによって物を決めたり、ルールを変えたりする経験が希薄。
■ 日本労働組合総連合会 事務局長 相原 康伸氏
主権者教育は学校だけでは完結しない。生活の中から課題を発見すること、社会的な対話が重要。
■ 山猫総合研究所 代表 三浦 瑠麗氏
政党が対立軸とする争点と、若者が高い関心を持つイシューにズレがある。何を基準に誰を選べばよいのかわからないという声もある。
議論のハイライト
―政治への関心よりも、社会的な課題への関心が重要?
■ 上智大学/ジュニア・アカデメイア 第5期生 内藤 誠氏
投票に行かない友人も多く、「投票に行くのはいいが、政治そのものが面倒くさい」がその理由。政治が「自分ごと」と考えられていない。
■ 日本労働組合総連合会 事務局長 相原 康伸氏
「ソーシャル・ダイアログ(社会対話)」という言葉を広めようとしてきた。他者の意見や価値観を自分自身に引き付け、立場を置き換えるとどうなるかを考えるような対話が欠けている。
■ お茶の水女子大学/ジュニア・アカデメイア 第4期生 山本 真央氏
社会問題に関心を持つとその解決に必要な政策が分かり、その政策を訴える候補者を選ぶこともできるようになる。社会問題への問題意識が、政治に対する諦めの克服につながらないだろうか。
■ 山猫総合研究所 代表 三浦 瑠麗氏
日本には関心を持ちやすいシングルイシューがいろいろある。最近の例としては、夫婦別姓問題。2019年参議選を挟み論点が示され、メディアで取り上げられ、世論調査の数字が賛成に振れて、自民党の中からも声が上がるようになった。政治を動かす方法は投票だけではない。公の場の議論が大きな変化を生む。
―インターネット投票をどう考えるか
■ お茶の水女子大学/ジュニア・アカデメイア 第4期生 山本 真央氏
インターネット投票が可能になっても、軽い気持ちで投票する人も出てくるだろうから、その前に主権者教育が必要だ。
■ 東京大学大学院 法学政治学研究科 教授/経済同友会 アドバイザリー・グループメンバー 谷口 将紀氏
一定の知識や教養がないと投票できない、というのは逆効果だと思う。大事なのは、政治に対する経験値と有効性感覚を高めること。
■ 山猫総合研究所 代表 三浦 瑠麗氏
インターネット投票に反対する理由は、歩いて投票に行くプロセスが代議制民主主義に似ているからである。政治と合理化は必ずしも合わないのではないか。投票や政策の選択肢を決めるための議論といった余裕が代議制民主主義には含まれる。
―予定調和の打破に向けて
■ 日本経済新聞社 編集局 経済部 記者 小太刀 久雄氏
特に若い有権者は、自分たちが投票しても、個別政策は予定調和の路線で決まってしまうとの諦観があるのではないか。メディアも考え直す必要がある。経済界の皆さまには予定調和を脱す、もっと生々しい議論を期待したい。
■ 山猫総合研究所 代表 三浦 瑠麗氏
メディアが期待するような発言をしないと、メディアは取り上げてくれない。背景には、表向きは「変えたい」と言いつつ、「変えたくない」が本音、という欺瞞の構図。欺瞞を行っているのは40歳以上の既得権を持っている世代。社会変革を進めるためにも、若者の政治参画が進むことを期待する。
■ 日本若者協議会 代表理事 室橋 祐貴氏
予定調和の最たるものが国会だろう。実質的に、与党の部会で全てが決まっており、国会で野党が反対してもあまり意味がない。記者クラブの制約も強く、ウェブメディアが参入できない。こうした点も視野に、情報の質をどのように高めるかを議論したい。
―政策決定の場に若者の参画を促すには
■ 経済同友会 幹事 髙島 宏平氏
多くの人にとって、投票とは政策よりも人間の選択になる。投票行為に値する人が選択肢の中に含まれているのかが重要である。政治の世界でも、20代、30代の候補者の育成、活用が必要なのではないか。政府の有識者会議に年齢割り当てを設けることも一案。
■ 山猫総合研究所 代表 三浦 瑠麗氏
変わるべきなのはマジョリティの側。多数派がより公正になることが重要である。
■ 日本若者協議会 代表理事 室橋 祐貴氏
若者の政治参画というと、「どうやって若者を変えるか」という議論になりがちだが、本当に変わらなければいけないのは年長者の世代である。将来の政治家を育てていく視点がとても重要。政治家になる方法も含め、主権者教育のあり方を変えていく必要がある。
■ 日本労働組合総連合会 事務局長 相原 康伸氏
地方議員のなり手が不足している。コロナ禍の影響で、在宅勤務が増えている環境変化を追い風に、地域目線を一歩先に進めて、議会への参加につなげていく必要がある。
特別セッション2:「分散型社会への選択肢と首都東京の価値」
「コロナ危機のレガシー」ともいえるリモートアクセスの活用によって、さまざまな可能性が示され、企業・地方・個人にとっての新しい可能性や、世界的な都市間競争が高まる中にあっての首都・東京の役割、国際競争力を維持する方策などについて議論を行いました。
―新型コロナ感染症がもたらした社会の変化
■ 東京都副知事 宮坂 学氏
コロナ禍でテレワーク実施率が6%から60%に増加、2年分の変化が数カ月で一気に起こった。主要ターミナル駅の乗客は3分の1に減少して疎になったがインターネットのトラフィックは1.7倍に。コロナ危機を経て何か一つレガシーを残すとすれば、デジタル化。
■ 三重県知事 鈴木 英敬氏
東京圏でテレワークが急増し、その経験者の間で地方移住への関心が高いという調査結果もある。地理的制約がなくても働けるという感覚を持つ方が増えているのかもしれない。Uターン、Iターン希望者や移住相談も増えている。
■ ランサーズ 取締役社長CEO/経済同友会 第1期ノミネートメンバー 秋好 陽介氏
テレワークの浸透で全国から優秀な社員を雇用可能に。ジョブ型移行、フリーランスや派遣社員の活用、コロナネイティブの新卒増加等により企業も人材戦略の転換を迫られる。
■ 白馬インターナショナルスクール設立準備財団 代表理事 草本 朋子氏
諸外国では、政府の休校要請を受け、すぐにオンライン授業が始まったが、日本でオンライン授業を取り入れた基礎自治体は5%だった。
―新型コロナ感染症が突き付けた日本の課題
■ 東京都副知事 宮坂 学氏
今、行うべきなのは、地理的な分散ではなく、さまざまな機能のデジタル空間への移動。都市に人々が集中するのは歴史的な流れであり、人間の本性である。デジタル空間への分散、地理的拘束からの解放の結果、地理的分散も生じるという流れである。
■ 三重県知事 鈴木 英敬氏
昭和の「日本列島改造論」は、道路や空港、新幹線の整備が柱。コロナ後は、防災・減災、通信インフラ、医療、教育の4分野が鍵。これを進めないと分散型社会に近づかない。
■ 慶應義塾大学 環境情報学部 教授 ヤフーCSO 安宅 和人氏
世の中で必要とされる人材が変化したのに人材モデルが刷新されなかったこと、リソースを若者や科学技術ではなくシニア層に割いたこと、いまだにオールドエコノミーの大企業によって未来を変えようとしていることの三つが日本の課題。今後も新たな感染症が登場することは確実。まちも社会もつくり直すべき時。次世代に何を残せるかが問われている。
■ 東京都副知事 宮坂 学氏
行政にとって、デジタルが重要というレガシーは残したい。インターネットにつながれることは、所得水準に関わりない基本的な権利。東京都では、5つくらいのエリアで、それぞれ異なるスタイルでのスマートシティ化に向け、トライ&エラーを進めている。
―望ましい分散型社会の姿
■ 慶應義塾大学 環境情報学部 教授 ヤフーCSO 安宅 和人氏
伝統的な都市の特徴である「密閉・高密度・接触」から「開放・開疎・非接触」へ、ヒトが動き回る代わりに、モノや情報が動く社会への展開である「開疎化」が必要。
東京はその豊かさで、日本の国境線となる離島やシニア層への対応、貧困層へのサポートなど、日本の最も弱い所を多面的に守っている。
■ 白馬インターナショナルスクール設立準備財団 代表理事 草本 朋子氏
デジタルの進歩で地方へ住むことの不利益が少なくなってきている。地域の良さを感じた人が、東京で働く以外のライフスタイルを自由に選択できる世の中になればよい。
■ ランサーズ 取締役社長CEO/経済同友会 第1期ノミネートメンバー 秋好 陽介氏
非連続的な仕事をする部署は、完全オンラインだと生産性が下がることが分かった。熱量が必要な場面では集合することは必要であり、東京にはそのための機能がある。
■ 東京都副知事 宮坂 学氏
東京の役割は、世界中から企業や人を引き付けるために頑張ること。東京を含む地方に権限や財源をさらに委譲し、地方分権を徹底的に進め、自治体が自由闊達に競争できるようにした方がよい。
地方へ共有すべきは、ソフトウエア、データ・フォーマット、ノウハウといった知的財産。行政が作るプログラムは原則オープンソース化すればよい。
■ 三重県知事 鈴木 英敬氏
地方創生関係交付金や企業版ふるさと納税などの仕組みができた点は評価できるが、成果につながっていない。その理由は、仕組みが中途半端、地方自治体の取り組み姿勢の温度差にある。
■ 日本政策投資銀行 取締役副社長 地下 誠二氏
東京では過度な人口集積が過度な高齢化という社会問題を生む。分散化するなら、地方コミュニティは基礎自治体が支える必要がある。そのためにも一定の経済のまとまり、圏域という考え方も大事。
■ 間下 直晃 経済同友会 副代表幹事
今回のセッションでは、分散型の定義があいまいだったと感じた。特に印象的だったことは、デジタル化によって選択肢が増えるということ。
(所属・役職は開催時)